前回の続きです。

今回は、IBの「未来のコンピテンシー」の初期セットのうち、創造的思考について説明します。

創造的思考(Creative thinking)

IB(国際バカロレア)の行った「未来のコンピテンシー」(Competencies in the future)という研究の中で、創造的思考(Creative thinking)についての報告書が出されています。以下では、その報告書に書かれている定義と結論部分(の一部)を中心に、簡単にご紹介します。(原文の英語を私(藤本)が和訳しました。)

出典:

Brandt, W. C. (2023). Measuring student success skills: A review of the literature on creative thinking. Dover, NH: National Center for the Improvement of Educational Assessment.

https://www.ibo.org/globalassets/new-structure/research/pdfs/creative-thinking-full-report-en.pdf

「創造的思考」の定義

「創造的思考は、反復的な(iterative)プロセスであり、その中で人はアイディアを生み出し、操作します。批判的な分析と評価を通じてそれらのアイディアを検証し、洗練させ、修正します。そして、問題を解決するため、問題解決策を改善するため、あるいは新たな方法で(in novel ways)知識を前進させるために、アイディアを伝達します。」(4頁)

「創造的な思考者は、問題に対する感受性、アイディアの流暢さ(fluency)、精神的な柔軟性、発散的思考と収束的思考の能力(divergent and convergent thinking skills)、身近な物や概念を再定義する能力、そして斬新なアイディアを効果的に伝える能力によって特徴づけられます(Guilford、1950年)。また創造的な思考者は、創造的プロセスに取り組む際に、気質的特性(dispositional qualities)(すなわち思考の習慣(habits of mind))を発揮する能力によっても特徴づけられます。」(4頁)

「創造的思考は、批判的思考、コミュニケーション能力、好奇心、協調性、粘り強さ(persistence)といった他の高次スキル(higher-order skills)や社会的・情緒的素養(social/emotional dispositions)を包含する、複雑なスキルです。」(3頁)

報告書の結論部分からの抜粋

「本報告書は、教育関連分野の研究を統合し、創造的思考の概念化、研究結果の報告、および評価設計と活用における対応する示唆について論じました。全体として、この文献は創造的思考が多面的な概念であり、認知的、対人的、内省的なスキル群を反映していることを示しています。創造的思考は、文脈や文化に依存する可塑的な(malleable)スキル群で構成され、正式な指導と、創造的プロセスを重視する環境条件への定期的な接触を通じて育成されます。創造的思考を促進するために設計されたプログラム、アプローチ、指導戦略に関する研究は、依然として比較的少ない状況です。しかしながら、プロジェクトベース学習や問題解決型学習に関連する一般的な原則と実践は、有望な結果を示しています。さらに、創造性を測定することは可能であるだけでなく、生徒の創造的潜在能力を開発し最適化するために効果的に活用できることが研究により示唆されています。そのためには、適切な文脈と目的のもとで、創造性の豊かさや広がりを理解するために、複数の情報源からデータを収集することが必要です。創造的思考は、創造的プロセスに関連するスキルや行動の育成を重視する日常的な形成的指導戦略を通じて、また、大人自身が自らの創造的潜在能力の開発に尽力する学校コミュニティにおいて、最も効果的に育成されるものと考えられます。」(30頁)

その他

「情報化社会において、創造的思考はキャリアの成功に不可欠です。世界経済フォーラム(WEF、2023年)によれば、創造的思考は雇用主にとって最も急速に成長しているスキルであり、重要度では第2位に位置づけられています。また、企業が従業員に対して優先的に研修を実施するスキルにおいても、創造的思考は人工知能(AI)やビッグデータを上回っています。」(3頁)

所感

IBの「創造的思考」の定義の中には、「斬新なアイディアを効果的に伝える能力」、つまりコミュニケーションの能力が含まれています。いくら新しいことを思いついても、それを効果的に表現できなければ不十分ということですね。

個人的には、「世界経済フォーラム(WEF、2023年)によれば、創造的思考は雇用主にとって最も急速に成長しているスキルであり、重要度では第2位に位置づけられています。」という部分が印象的でした。創造的思考が重視されていることは知っていましたが、そこまでだとは思っておらず、自分の認識を新たにしないといけないと思いました。

次回に続きます。

元塾 藤本豪