これまでシンガポール、カナダ、ノルウェーのコンピテンシーについて紹介してきました。次は、EUの「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」についてご紹介しようと思います。

「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」とは
EU各国の教育におけるコンピテンシーは、各国が定めることになっています。(前回までご紹介してきたノルウェーのコンピテンシーも、EUではなくノルウェーが定めたものです。) ただし、EUは、「勧告」(Recommendation)という形で、各国の参考になるよう、主要なコンピテンシーを定めています。このEUのコンピテンシーは、2006年に定められ、2018年に改訂されました。これが「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」(Key Competences for Lifelong Learning)です。
2018年改訂版の「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」は、次のとおりです。
- リテラシー(Literacy competence)
- 多言語能力(Multilingual competence)
- 数学的能力、科学・技術・工学の能力(Mathematical competence and competence in science, technology and engineering)
- デジタル能力(Digital competence)
- 人的・社会的・「学び方の学び」の能力(Personal, social and learning to learn competence)
- 市民性の能力(Citizenship competence)
- アントレプレナーシップの能力(Entrepreneurship competence)
- 文化的意識と表現の能力(Cultural awareness and expression competence)
「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」制定の経緯
2006年にEUのキー・コンピテンシーが定められるに至った経緯を簡単にご紹介します。
2000年3月、欧州理事会は、雇用、経済改革、社会的結束の強化のため、EUの新たな戦略目標を合意すべく、リスボンで特別会合を開きました。そこで採択されたのが、「リスボン戦略」と呼ばれる方針です。
リスボン戦略には、「知識社会における生活と労働のための教育・訓練」に関する方針も含めることになりました。その中に、「生涯学習(lifelong leaning)を通じて提供される新たな基礎的技能(IT技能、外国語、技術文化、アントレプレナーシップ、社会的スキル)を定義する欧州枠組みが策定されるべきである。」という内容が定められたのです。
このリスボン戦略を受け、欧州理事会は、EU各国の指針となるよう、主要なコンピテンシーを定める作業を始めました。ちょうど2003年にOECDが「若者と成人のためのキー・コンピテンシー」(Key Competencies for Youth and Adults)という報告書(DeSeCo報告書)を出したので、欧州理事会は、その内容から強い影響を受けながら、主要なコンピテンシーを定める作業を続けました。その結果2006年に定められたのが、EUの「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」です。
2006年版の「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」は、次のとおりです。
- 母国語でのコミュニケーション(Communication in the mother tongue)
- 外国語でのコミュニケーション(Communication in foreign languages)
- 数学的能力、科学・技術の基礎能力(Mathematical competence and basic competences in science and technology)
- デジタル能力(Digital competence)
- 学び方の学び(Learning to learn)
- 社会的・市民的能力(Social and civic competences)
- 主導性及びアントレプレナーシップ(Sense of initiative and entrepreneurship)
- 文化的意識と表現の能力(Cultural awareness and expression)
そしてその後、
(a) 自動化の対象となる仕事が増え、あらゆる仕事や生活の分野においてテクノロジーがより大きな役割を果たすようになったこと、及び、
(b) OECDのPISAやPIAACなどの国際調査の結果、基礎的なスキルが不十分な人の割合が高いことが明らかになったこと
から、内容に少し変更が加えられ、2018年に改訂版が定められました。
次回に続きます。
元塾 藤本豪


