前回の続きです。
今回は、IBの「未来のコンピテンシー」の初期セットのうち、分析的思考について説明します。

分析的思考(Analytical thinking)
IB(国際バカロレア)の行った「未来のコンピテンシー」(Competencies in the future)という研究の中で、分析的思考(Analytical thinking)についての報告書が出されています。以下では、その報告書に書かれている定義と結論部分(の一部)を中心に、簡単にご紹介します。(原文の英語を私(藤本)が和訳しました。)
出典:
Brandt, W.C., and Lorié, W. (2024). Measuring student success skills: A review of the literature on analytical thinking. National Center for the Improvement of Educational Assessment.
https://www.ibo.org/globalassets/new-structure/research/pdfs/analytical-thinking-full-report.pdf
「分析的思考」の定義
「分析的思考とは、以下の三つの認知的プロセスから成るものです。(1) 複雑な概念、問題、システム、またはプロセスを特定し、その構成要素に分解する(decomposing)こと、(2) それらの構成要素と、それぞれの特徴や機能を検証すること、(3) 構成要素が全体とどのように関連しているかを伝達または明確に説明する(articulating)こと。」(4頁)
「分析的思考の目的は様々ですが、最も頻繁に用いられるのは、概念、問題、システム、プロセスなど、あらゆる事象の仕組みを深く理解するためです。例えば、分析的思考はデータの傾向を発見し、因果関係を特定し、要因間の関連性を明らかにし、パターンやテーマを識別し、ヒューリスティックを構築するために適用されます。このように、分析的思考は問題解決、批判的思考、創造的思考における不可欠な要素としても機能します。」(4頁)
報告書の結論部分からの抜粋
「分析的思考は、情報化社会において生徒が活躍するために不可欠な認知能力です。複雑な概念、問題、システム、またはプロセスを構成要素に分解し、それらの要素を検証し、全体との関係性を理解するプロセスを含みます。分析的思考は、批判的思考や創造的思考といった他の21世紀型スキルと密接に関連しており、実行機能(executive function)、短期記憶・ワーキングメモリ、知識の獲得といった要素の影響を受けます。分析的思考を教える指導アプローチ分析的思考を包括的に評価したい教育者は、実践において様々な総括的評価ツールと形成的評価戦略を取り入れるべきです。研究は、分析的思考スキルの発達を時間をかけて支援するためには、継続的な形成的評価の実践が重要であることを強調しています。分析的思考は分野横断的でも分野特異的でもあり、どちらのアプローチも学生の分析的思考スキルを育成する上で有望であることが示されています。分析的思考を測定・評価するには標準化されたテストやパフォーマンスベースの評価が一般的に用いられますが、定義や媒介要因の多様性により、その定義と評価には課題が存在します。異なる領域における分析的思考の特性を解明し、指導アプローチの有効性に関するより決定的な証拠を確立するためには、さらなる研究が必要です。評価の専門家と教育者双方が、本研究の知見を教育実践と評価手法に組み込むことで、学生の分析的思考スキル育成をより効果的に支援できるでしょう。」(24-25頁)
その他
「21世紀型スキルフレームワークをマッピングしており、その多くは明示的にSELに焦点を当てたものではありません(ハーバード大学教育大学院、n.d.)。代表的な21世紀型スキル枠組みの例としては、バテル・フォー・キッズ・パートナーシップ・フォー・21世紀学習による「21世紀型スキル枠組み」(Battelle, 2019)、CASELの「体系的な社会的・情緒的学習のための枠組み」(CASEL, 2022)、ACTの「教育と仕事の成功のための総合モデル」(ACT, 2022)などが挙げられます。EASELのデータベースに登録されている40の枠組みのうち4つ(10%)が「分析的思考」(例:分析的、分析する)に何らかの言及をしています。しかしながら、これらの枠組みのいずれにおいても、「分析的思考」または「解析的思考」を独立したスキルとして明示しているものはありません。」(36頁)
所感
「その他」のところで紹介したとおり、「分析的思考」を独立したスキルとして明示している著名なフレームワークはないようです。私(藤本)がこれまで十数カ国のコンピテンシー枠組みを見てきた中にも、「分析的思考」を独立したコンピテンシーとしている国はありませんでした。分析的思考は、それだけ基本的な認知的スキルであるということだと思います。
個人的には、分析的機能は「実行機能、短期記憶・ワーキングメモリ、知識の獲得といった要素の影響を受けます」という部分と、「分析的思考は分野横断的でも分野特異的でもあり、どちらのアプローチも学生の分析的思考スキルを育成する上で有望であることが示されています。」が、とくに印象的でした。
次回に続きます。
元塾 藤本豪


