前回の続きです。

今回は、数学的能力、科学・技術・工学の能力(Mathematical competence and competence in science, technology and engineering)

についてお話しします。

数学的能力、科学・技術・工学の能力

数学的能力、科学・技術・工学の能力(Mathematical competence and basic competences in science and technology)について、EUの「生涯学習のためのキー・コンピテンシー」では、次のとおり定められています。(欧州理事会の勧告(2018/C 189/01)の別紙の内容から一部を抜き出して紹介します。)

「数学的能力とは、日常生活における様々な問題を解決するために、数学的思考と洞察力を発展させ応用する能力を指します。確かな数的能力(sound mastery of numeracy)を基盤とし、知識だけでなくプロセスと活動に重点が置かれます。数学的能力には、程度の差こそあれ、数学的思考様式(mathematical modes of thought)や表現方法(数式、モデル、概念、グラフ、図表)を活用する能力(ability)と意欲が含まれます。」

「科学における能力とは、観察や実験を含む知識体系と方法論を活用し、疑問点を特定し、証拠に基づいた結論(evidence-based conclusions)を導き出すことで自然界を説明できる能力(ability)と意欲を指します。技術と工学における能力は、認識された人間の欲求や必要性に応える形で、その知識と方法論を応用するものです。科学・技術・工学における能力には、人間の活動によってもたらされる変化への理解と、個人である市民としての責任が伴います。」

このコンピテンシーに関連する必須の知識、技能、および態度

「数学において必要な知識には、数・測定・構造に関する確かな理解、基本演算および基礎的な数学的表現、数学用語と概念の理解、そして数学が答えを提供し得る問題への認識が含まれます。

個人は、家庭や職場といった日常的な場面において基本的な数学的原理やプロセスを適用する能力(例:金融スキル)、論理展開(chains of arguments)を追跡し評価する能力を有すべきです。数学的に推論し、数学的証明を理解し、数学的言語で意思疎通を図り、統計データやグラフを含む適切な補助手段を活用し、デジタル化の数学的側面を理解する能力が求められます。

数学に対する前向きな姿勢は、真実への敬意と、理由を探求しその妥当性(validity)を評価しようとする意欲に基づいています。」

「科学、技術、工学に関する必須知識には、自然界の基本原理、基礎的な科学的概念、理論、原理、方法、技術および技術的製品・プロセス、ならびに科学、技術、工学、および人間活動全般が自然界に与える影響についての理解が含まれます。これらの能力は、個人が社会全体における科学的理論、応用、技術の進歩、限界、リスク(意思決定、価値観、倫理的問題、文化などに関連して)をより深く理解することを可能にするべきです。

技能には、観察や管理された実験を含む特定の方法論による探究プロセスとしての科学の理解、仮説を検証するための論理的・合理的な思考能力、新たな実験結果と矛盾する場合に自身の確信を捨てる心の準備(readiness)が含まれます。目標達成や証拠に基づく意思決定・結論に至るために、技術的ツールや機械、科学的データを活用・操作する能力も含まれます。また、科学的な探究の本質的な特徴を認識し、その結論に至った過程や推論を伝える能力も必要です。

コンピテンシーには、批判的評価(critical appreciation)と好奇心を持つ姿勢、倫理的問題への配慮、安全と環境の持続可能性への支持が含まれます。特に、自身、家族、地域社会、そして地球規模の問題に関連する科学技術の発展に関して、これらの要素が求められます。」

所感

いわゆる数的リテラシーと科学・技術・工学の能力が一緒になっています。さらに、倫理の面や、地球規模の問題に関する面(持続可能性など)も含まれています。

個人的には、「新たな実験結果と矛盾する場合に自身の確信を捨てる心の準備(readiness)が含まれます」という部分が良いと思いました。貴重な指摘と思います。

次回に続きます。

元塾 藤本豪