前回の続きです。
今回は、倫理(Ethics)についてです。

倫理を主要コンピテンシーとして定めている国・地域・組織
このブログで取り上げた17の国、地域、組織のうち、コンピテンシーの一つとして「倫理」(Ethics)を挙げているのは、ノルウェー、IB(国際バカロレア)、フィンランド、オーストラリア、マレーシア、インドです。
言うまでもなく、倫理は他の国々の教育でも重視されていると思われます。
ノルウェー
まず、ノルウェーでは、「倫理的意識」(ethical awareness)について、次のとおり定めています。
倫理的意識(ethical awareness)
倫理的意識とは、様々な考慮(different considerations)のバランスをはかること(balancing)を意味し、思慮深く責任ある人間(reflecting and responsible human being)となるためには必要不可欠なものです。
リンク
https://www.udir.no/lk20/overordnet-del/?lang=eng
IB(国際バカロレア)
次に、IB(国際バカロレア)では、倫理的思考(Ethical thinking)について、下記のとおり定めています。
出典:
Lorié, W. (2023). Measuring student success skills: A review of the literature on ethical thinking. Dover, NH: National Center for the Improvement of Educational Assessment.
https://www.ibo.org/globalassets/new-structure/research/pdfs/ethical-thinking-full-report-en.pdf
倫理的思考(Ethical thinking)
「倫理的思考とは、様々な状況において倫理的問題を特定し記述する過程、それらの問題に対する異なる対応に内在する倫理的配慮を明確にすること(articulating)、そしてそれらの配慮に対応する立場の根拠(rationale)を示すことを指します。倫理的問題とは、倫理的配慮を考慮せずに解決できないジレンマを指します。こうした配慮には以下が含まれます:
- 正誤(right and wrong)
- 善悪(good and bad)の概念
- 個人、共同体、非人間動物の尊厳と権利
- 価値観、原則、中核的信念
- 倫理的決定の結果
- 動機と意図
- 道徳的性格(moral character)、誠実さ(integrity)、徳性(virtue)
- 責任、義務、責務
- 正義、公平性、平等(equity)」(5頁)
リンク
https://www.ibo.org/globalassets/new-structure/research/pdfs/ethical-thinking-full-report-en.pdf
フィンランド
フィンランドでは、「倫理、環境の面の素養」(Ethical and environmental competence)について、次のとおり定めています。
倫理、環境の面の素養(Ethical and environmental competence)
倫理、環境の面の素養
- 公益(common good)のための価値に基づく倫理的行動
- 自然の多様性への理解;研究に基づく気候変動対策
- 循環型経済と持続可能な消費行動への理解
リンク
https://v8.australiancurriculum.edu.au/f-10-curriculum/general-capabilities/ethical-understanding
オーストラリア
オーストラリアでは、倫理的理解(Ethical Understanding)について、次のとおり定めています。
倫理的理解(Ethical Understanding)
倫理的理解(Ethical Understanding)は、『正直さ(honesty)、強靭さ(resilience)、共感(empathy)、他者への尊重(respect of others)』などの個人的な価値観と特性の育成、および倫理的な誠実さ(ethical integrity)を持って行動する能力を養うことで実現されます。
倫理的理解は次のような構造をもっています。
- 倫理的概念(ethical concepts)および倫理的問題(ethical issues)についての理解
- 意思決定と行動における推論・判断(reasoning)
- 価値観、権利、責任の探求
倫理的概念(ethical concepts)および倫理的問題(ethical issues)についての理解
この要素は、生徒が倫理的概念と倫理的問題についての理解を深めること指します。
生徒は、倫理的概念を認識し、文脈の中で倫理的問題を探求することを学びます。倫理的概念を特定し、検討し、具体例を挙げます。文脈における倫理的概念の側面について議論し、分析し、探求します。
意思決定と行動における推論・判断(reasoning)
この要素は、生徒が意思決定を行う際に推論し(reasoning)、倫理的に行動することを指します。生徒は、倫理的行動の結果を考え(consider)、それについて考察します(reflect)。倫理的判断を下す際には、立場の背景にある理由を分析し、ますます多様な状況において行動の意図された(intended)結果と意図しない(unintended)結果を評価します。生徒は、社会的文脈における様々な倫理的対応(ethical responses)についての理解を明確に表現(articulate)します。
価値観、権利、責任の探求
この要素は、生徒が様々な状況や実践において、個人の権利と責任、集団の権利と責任を特定し検討することを指します。生徒は、表明された価値観の事例を用いて社会的相互作用(social interactions)を説明し、社会的・法的領域における権利と責任を判断します。また、倫理的状況(ethical contexts)における様々な見解(points of view)を認識し解釈します。
リンク
マレーシア
マレーシアは、倫理と精神性(Ethics and Spirituality)について、次のとおり定めています。
倫理と精神性(Ethics and Spirituality)
教育制度は、すべての生徒に強固な倫理観と精神性を育み、成人後に必ず直面する課題に立ち向かう準備を整え、紛争(conflicts)を平和的に解決し、重大な局面において健全な判断力と原則(sound judgement and principles)を働かせ、正しいことを行う勇気を持つよう導きます。また、教育制度は、地域社会の向上に有益な貢献をする思いやりのある人材(caring individuals)を育成することを目指しています。
リンク
https://www.pmo.gov.my/wp-content/uploads/2019/07/Malaysia-Education-Blueprint-2013-2025.pdf
所感
「倫理とは何か?」というのは大変難しい問題と思いますが、上記の説明をまとめると、ひとまず、「倫理」とは、他者、社会、公共といった自分以外のものの利益に配慮しながら意思決定と行動をすること、といえそうです。
なお、オーストラリアは「倫理的理解(Ethical Understanding)」という語を使っていますが、単に頭の中で理解するだけでなく、倫理的な考えを明確に表現することや倫理的に行動することも含んでいます。フィンランドとマレーシアも、それぞれ「倫理的行動」「正しいことを行う」と書いており、実際に行動することを含んでいます。
次回に続きます。
元塾 藤本豪


