前回に続き、一つ一つのコンピテンシーの意味内容を見ていきたいと思います。
今回は、数の能力(Numeracy)についてです。

数の能力を主要コンピテンシーとして定めている国・地域・組織
このブログで取り上げた17の国、地域、組織のうち、コンピテンシーの一つとして数の能力(numeracy または mathematical competence)を挙げているのは、EU、エストニア、スペイン、オーストラリアです。数の能力は基礎中の基礎の能力なので、わざわざ書くまでもない、と考えている国が多いのだと思われます。
EU
EUは、数学的能力(Mathematical competence)について、次のとおり定めています。
数学的能力(Mathematical competence)
「数学的能力とは、日常生活における様々な問題を解決するために、数学的思考と洞察力を発展させ応用する能力を指します。確かな数的能力(sound mastery of numeracy)を基盤とし、知識だけでなくプロセスと活動に重点が置かれます。数学的能力には、程度の差こそあれ、数学的思考様式(mathematical modes of thought)や表現方法(数式、モデル、概念、グラフ、図表)を活用する能力(ability)と意欲が含まれます。」
「数学において必要な知識には、数・測定・構造に関する確かな理解、基本演算および基礎的な数学的表現、数学用語と概念の理解、そして数学が答えを提供し得る問題への認識が含まれます。
個人は、家庭や職場といった日常的な場面において基本的な数学的原理やプロセスを適用する能力(例:金融スキル)、論理展開(chains of arguments)を追跡し評価する能力を有すべきです。数学的に推論し、数学的証明を理解し、数学的言語で意思疎通を図り、統計データやグラフを含む適切な補助手段を活用し、デジタル化の数学的側面を理解する能力が求められます。
数学に対する前向きな姿勢は、真実への敬意と、理由を探求しその妥当性(validity)を評価しようとする意欲に基づいています。」
リンク
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32018H0604(01)
スペイン
スペインは、数学的能力(Competencia matemática)について、次のとおり定めています。
数学的能力(Competencia matemática)
「数学的能力は、様々な状況における様々な問題を解決するために、数学的視点と推論を発展させ、適用することを可能にします。」
リンク
オーストラリア
オーストラリアは、数の能力(Numeracy)について、次のとおり定めています。
数の能力(Numeracy)
数の能力(Numeracy)とは、生徒が幅広い状況において数学を活用するために必要な知識、スキル、行動、及び態度のことです。
オーストラリアの教育では、生徒が他の学習領域や日常生活において数学を自信を持って活用する知識とスキルを身につけることを、目標の一つとしています。
数の能力は次のような構造をもっています。
- 整数を用いた推定と計算(Estimating and calculating with whole numbers)
- パターン及び関係の認識及び活用
- 分数、小数、パーセンテージ、比と比率の活用
- 空間的推論(spatial reasoning)の活用
- 統計情報の解釈
- 測定(measurement)の活用
それぞれの意味は以下のとおりです。
整数を用いた推定と計算
生徒が様々な目的で数字を使うことを指します。
生徒は、効率的な暗算・筆算・デジタルの計算という戦略を用い、様々な実生活の場面(a wide range of authentic contexts)において日常的な問題(everyday problems)を解決しモデル化するため、整数の推定と計算のスキルを適用します。また、金銭が使われる状況を特定し、金銭の価値に関する知識を、購入・予算作成・金銭の使用の検討(justifying)に適用します。
パターン及び関係の認識及び活用
生徒が傾向(trends)を特定し、多様な規則性や関係性を記述・活用してパターンを継続・予測することを指します。生徒は、パターンや関係性に関する理解を、実際の状況における問題解決に応用します。
分数、小数、パーセンテージ、比と比率の活用
生徒が分数や小数の意味、それらをパーセンテージ・比・比率として表す方法、そして実生活での応用方法を理解することを指します。生徒は、物体や図形の比率、パーセンテージ・比・比率の関係性を活用して、視覚化し、順序付けし、説明することで、実生活の場面における問題(problems in authentic contexts)を解決します。
空間的推論の活用
生徒が周囲の空間を理解することを指します。生徒は、周囲の主要な特徴(features)を説明しながら、形や物体を視覚化し、識別し、分類します。対称性、形、角度を用いて実生活の場面における問題を解決し、縮尺、凡例、方位の表現を活用して地図や図表を解釈し、経路や位置を特定、記述します。
統計情報の解釈
生徒が統計情報の表し方に習熟すること(gaining familiarity)を指します。生徒は、様々な種類のデータ表示(data displays)の収集、記録、提示(displaying)、比較、効果の評価(evaluating the effectiveness)を含む、実生活の場面における問題を解決します。また、確率的な出来事の結果を説明する際に、適切な言葉と数値表現(language and numerical representations)を用います。
測定の活用
生徒が長さ、面積、体積、容積、時間、質量の測定について学ぶことを指します。生徒は、実生活の場面における問題を解決する際に、メートル法の単位を用いて推定し、測定し、比較し、計算します。時計を読み取り、時間の単位の変換を行い、カレンダーを用いて日付や出来事を特定し、順序付け、様々な目的で時間表(time table)を活用します
リンク
https://v8.australiancurriculum.edu.au/f-10-curriculum/general-capabilities/numeracy
所感
どれにも共通しているのは、日常の様々な問題において数学の考え方を活用するという点ですね。
オーストラリアの説明は、詳細で、しかもわかりやすいです。「整数を用いた推定と計算」など6つのカテゴリーを特定していることが、とくに素晴らしいと思いました。
次回に続きます。
元塾 藤本豪


