前回まで、各国の定めるコンピテンシーを紹介してきました。これから、一つ一つのコンピテンシーの意味内容を見ていきたいと思います。

今回は、言葉の能力(リテラシー)についてです。

言葉の能力(リテラシー)を主要コンピテンシーとして定めている国・地域・組織

このブログで取り上げた17の国、地域、組織のうち、コンピテンシーの一つとして言葉の能力(Literacy)を挙げているのは、EU、アイルランド、オーストラリアです。3つだけですが、言葉の能力(Literacy)は基礎中の基礎の能力なので、わざわざ書くまでもない、と考えている国が多いのだと推察します。

EU

EUは、言葉の能力(Literacy)について、次のとおり定めています。

リテラシー(Literacy competence)

「リテラシーとは、さまざまな分野や状況にわたって、口頭および書面の両形式で、視覚的・音声的・デジタル素材を用い、概念、感情、事実、意見を識別し(identify)、理解し、表現し、創造し、解釈する能力を指します。これは、適切かつ創造的な方法で他者と効果的にコミュニケーションを取り、つながる能力を意味します。

リテラシーの発達は、さらなる学習とさらなる言語的相互作用(linguistic interaction)の基盤を形成します。状況に応じて、リテラシーの能力は、母語、学習言語(language of schooling)、および/または国や地域の公用語において育成されます。」

このコンピテンシーに関連する必須の知識、技能、および態度

「このコンピテンシー(competence)には、読み書きの知識と、書かれた情報を正しく理解する力(sound understanding)が含まれます。したがって、語彙、機能文法(functional grammar)、言語の機能に関する知識が求められます。主な言語的相互作用の形態、様々な文学的・非文学的テキスト、言語の異なる様式や語調(registers)の主な特徴に対する認識も含まれます。

個人は、様々な場面において口頭および書面でコミュニケーションをとる能力、ならびに状況の要求に応じて自身のコミュニケーションを監視し(monitor)適応させる(adapt)技術を有すべきです。このコンピテンシーには、異なる種類の情報源を区別し活用する能力、情報を検索・収集・処理する能力、補助(aids)を活用する能力、文脈に応じた説得力のある(convincing)方法で口頭および書面による主張を構築し表現する能力も含まれます。批判的思考と情報を評価し扱う力(ability to assess and work with information)もこれに含まれます。

リテラシーに対する積極的な姿勢(positive attitude)には、批判的かつ建設的な対話への意欲(disposition)、美的特質(aesthetic qualities)への理解、他者との交流への関心(interest)が含まれます。これは、言語が他者に与える影響(impact)への自覚、そして言語を前向き(positive)かつ社会的責任を持って理解し使用する必要性を示唆しています。」

リンク

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32018H0604(01)

アイルランド

アイルランドの定め方は、次のとおりです。

リテラシー(Being Literate)

  • 言葉(words)と言語(language)への理解と楽しみを向上させる(developing)
  • 文化的な理解をともなって、楽しみのために読む
  • 様々な目的のために書く
  • 考え(ideas)を明確かつ正確に表現する
  • 話す技術(spoken language)を向上させる
  • マルチモーダルなテキストを含む、様々なテキストを探求し、制作する

リンク

https://assets.gov.ie/static/documents/framework-for-junior-cycle-2015.pdf

オーストラリア

オーストラリアでは、言葉の能力(Literacy)について、次のとおり定めています。

リテラシー(Literacy)とは、生徒が聴き、読み、閲覧し(viewing)、話し、書き、口頭・印刷・視覚的・デジタルのテキスト(texts)を作成するとともに、多様な文脈において様々な目的のために言語を使用及び調整(modifying)させる能力です

リテラシーの教育は、単に知識とスキルを教えるのではなく、生徒が自信をもって、リテラシーのスキルを広く使いたいと思えるようになることを含みます。

リテラシーは次のような構造をもっています。

(a) 聴く、読む、閲覧することによるテキストの理解

(b) 話す、書く、制作することによるテキストの作成(composing)

(a)(テキストの理解) は、生徒が口頭・書面・視覚・マルチモーダルなテキストにアクセスし解釈するための技能と戦略(strategies)を用いることを指します。【藤本注・「マルチモーダル」とは、文字、画像、音声、動画など、異なる種類の情報を組み合わせることを指します。】

これには、情報収集のための聴取(listen)、課題遂行のための(to carry out tasks)聴取、教室での活動や議論への参加の一環としての聴取が含まれます。

上記の「戦略」というのは、具体的には、文字通りの情報(literal information)を引き出し(retrieving)整理すること(organising)、推論(inferences)を行いそれを裏付けること、情報と視点(points of view)を評価することなどを含みます。

(b)(テキストの作成) は、様々な目的のために、異なる種類のテキストを作成することを指します。

これらのテキストには、学習領域における情報、考え及び問題を探索し(explore)、コミュニケーションをとり、分析する、口頭・書面・視覚的(visual)・マルチモーダルなテキストが含まれます。

生徒は、グループやクラスでの議論(discussions)、学習分野のトピックを探求・調査する話し合い(talk)、公式・非公式の発表(presentation)や討論(debates)など、教室での学習体験の一環として、公式・非公式のテキストを作成します。

リテラシーを発達させ実践する中で、生徒は次のことを行います。

  • 学習分野における口頭・書面・視覚的(visual)・マルチモーダルなテキストを作成する
  • 言語を用いて他者と交流する(interact with others)
  • 発表を行う(deliver presentations)

(a)(b)それぞれにつき、

  • テキストの知識(Text knowledge)(構造の知識、一貫性の知識)
  • 文法知識(Grammar knowledge)(情報を伝達し、アイディアを表すための文法の知識)
  • 語彙の知識(Word knowledge)(学習領域における語彙、スペリング)
  • 視覚的知識(Visual knowledge)(画像、動画、グラフ、表、地図その他の視覚表現の解釈、画像と言語の相互作用についての理解)

が含まれます。

「テキストの知識」とは、情報の提示(present)、手順(processes)や関係(relationships)の説明、主張(points of view)の展開(argue)と根拠づけ(support)、および問題点(issues)の調査(investigate)のために用いられる、様々な種類のテキスト構造を理解すること、ならびに、テキスト全体のまとまりについての理解を深めることを指します。

「文法知識」とは、テキストにおいて文法の果たす役割(意味の構築にどのように結びついているか)を理解することです。テキストの中で意見、評価、視点、バイアスが文法によって構築されるので、その文法について理解する、ということです。

「語彙の知識」とは、学習分野の文章を作成し理解するために必要な、専門的な語彙とスペルを理解することを指します。

「視覚的知識」とは、学習分野のテキストにおいて視覚情報が意味形成にどのように寄与するかを理解することを指します。生徒は、静止画(still images)や動画(moving images)、グラフ、表、地図その他の図表を解釈し、様々な学習分野においてどのように画像(images)と言語が特別な方法で連携して、自身が作成・理解するテキスト内の概念や情報を提示するかを、理解します。

リンク

https://v8.australiancurriculum.edu.au/f-10-curriculum/general-capabilities/literacy

以上がオーストラリアの説明です。非常に充実していますね。

所感

リテラシーについて、OECDのLearning Compass 2030では、次のとおり書かれています。

「リテラシーとは、人々が効果的にコミュニケーションを取り、世界を理解できるようにする、「読む・書く・話し・聞く」の能力である。より具体的には、様々な形式や文脈において、多様な目的のために、文字や視覚的な情報(visual information)を理解し、解釈し、利用し、創造する能力(記号/記号体系の符号化(encoding)と復号化(decoding)に基づく意味の生成)と理解できる。」

このOECDの定義や、EU、アイルランド、オーストラリアの定義からわかるとおり、「リテラシー(Literacy)」といった場合、文字情報に限らず、視覚的な情報も含むというのが、標準的な理解となっているようです。

まとめると、文字だけでなく図表、画像、動画を含め、およそ何らかの意味内容を表したもの(テキスト)を理解し、解釈し、利用し、また、制作する能力、といったところでしょうか。

個人的には、「楽しむ」という要素が含まれているアイルランドの定め方が気に入っています。教育の目的が一人ひとりの幸せ(ウェルビーイング)にある以上、楽しむことを学ぶというのは、とても重要な要素なのではないでしょうか。

「リテラシーの教育は、単に知識とスキルを教えるのではなく、生徒が自信をもって、リテラシーのスキルを広く使いたいと思えるようになることを含みます。」というオーストラリアの定め方も良いですね。自信をもつこと、積極的に使いたいとおもえるようになることは、非常に大切です。

次回に続きます。

元塾 藤本豪