前回に続き、一つ一つのコンピテンシーの意味内容を見ていきます。
今回は、自己認識と自己管理 (Self-Aware & Self-Management)についてです。

自己認識と自己管理を主要コンピテンシーとして定めている国・地域・組織
このブログで取り上げた17の国、地域、組織のうち、コンピテンシーの一つとして「自己認識」又は「自己管理」(Self-Aware / Self-Management又はSelf-Direction)や人的能力(personal competency)を挙げているのは、シンガポール、カナダ、EU、スペイン、米国(P21)、アイルランド、オーストラリア、韓国、台湾、ブラジルです。
カナダ
カナダでは、「自己認識と自己管理」 (Self-Aware & Self-Management)について、次のとおり定めています。
(このブログで以前に「学び方の学び」と併せて紹介しましたが、そこから「学び方の学び」の部分を削除して載せます。)
自己認識と自己管理 (Self-Aware & Self-Management)
「自己管理と自己認識」を身につけることには、動機づけ、粘り強さ(perseverance)、強靭さ(resilience)、自己調整(self-regulation)を支える姿勢(dispositions)の育成が含まれる。自身の学習能力への信頼(belief)(成長のマインドセット)と、過去・現在・未来の目標、潜在的な行動や戦略および結果を、計画し、監視し(monitoring)・振り返る(reflecting)という手法(strategies)とを組み合わせる。自己省察(self-reflection)と思考についての思考(メタ認知)は、絶えず変化する世界(ever-changing world)における生涯学習、適応能力(adaptive capability)、ウェルビーイング、そして学習の転移(transfer of learning)を促進する。
「自己認識と自己管理」には、以下の要素が含まれます。
- 私的な面・教育面・職業面における目標を策定し(develop)、それらを達成するために困難を乗り越えるよう粘り強く取り組む(persevere)
- 生涯学習者(lifelong learner)となるため自己調整を行う(self-regulate)
- 自己と他者を理解する感情的知性(emotional intelligence)を育む
- 変化に適応し、逆境(adversity)に耐える強靭さ(resilience)を示す
- 身体的、感情的(人間関係、自己認識)、精神的、心理的なウェルビーイングなど、生活の様々な側面を管理する(manage)
- 体育活動(exercise activities)への取り組み方と取り組む意義について理解し、運動のための動作スキル(movement skills)を習得する
- 過去を踏まえて現在を理解し未来にアプローチする
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EU
EUでは、人的・社会的・「学び方の学び」の能力(Personal, social and learning to learn competence)について、次のとおり定めています。
人的・社会的・「学び方の学び」の能力(Personal, social and learning to learn competence)
「人的・社会的・「学び方の学び」の能力とは、自己を省察し(reflect upon oneself)、時間と情報を効果的に管理し、建設的な方法で他者と協働し、強靭性を保ちながら(remain resilient)自身の学習とキャリアを管理する能力です。これには、不確実性や複雑性に対処する能力、学び方を学ぶ能力、身体的・情緒的(emotional)なウェルビーイングを支援する能力、心身の健康を保つ能力、健康を意識した(health-conscious)、将来を見据えた(future-oriented)生活を送る能力、包括的で支援的な環境において共感し、対立を管理する能力が含まれます。」
このコンピテンシーに関連する必須の知識、技能、および態度
「良好な対人関係と社会参加を実現するためには、様々な社会や環境において一般的に受け入れられている行動規範やコミュニケーションのルールを理解することが不可欠です。人的・社会的・「学び方の学び」の能力には、健全な心身と生活スタイルの構成要素(components)に関する知識も求められます。これには、自身の好ましい学習戦略の把握、能力開発の必要性の認識(knowing one’s competence development needs)、能力を伸ばす様々な方法の理解、そして利用可能な教育・訓練・キャリア機会や指導(guidance)・支援の探索(search)が含まれます。
スキルには、自身の力(capacities)を認識し、集中し、複雑な状況に対処し、批判的に考察し、意思決定を行う能力が含まれます。これには、協働的および自律的に(autonomously)学び働く能力、学習を計画し継続する能力、学習内容を評価・共有する能力、適切な支援を求める能力、そして自身のキャリアと社会的交流を効果的に管理する能力も含まれます。個人は強靭性を持ち(be resilient)、不確実性やストレスに対処できるべきです。様々な環境で建設的にコミュニケーションを取り、チームで協力し、交渉できるべきです。これには、寛容さを示し(showing tolerance)、異なる視点を表現・理解すること、および、信頼(confidence)を築き、共感する能力も含まれます。
この能力は、個人的・社会的・身体的なウェルビーイングおよび生涯にわたる学習に対する、前向きな姿勢に基づいています。協働、自己主張(assertiveness)、誠実さ(integrity)という態度が基盤となります。これには他者の多様性やニーズを尊重し、偏見を克服するとともに妥協する準備が整っていることも含まれます。個人は、目標を特定して設定することができ、自己を動機付けることができ、そして生涯にわたり学びを追求し成功させるための強靭性と自信を育めることができるべきです。問題解決の姿勢(problem-solving attitude)は、学習プロセスと、個人が障害(obstacles)や変化に対処する能力の両方を支えます。これには、これまでの学習や生活経験(life experiences)を活用しようとする意欲(desire)、そして様々な生活状況(life contexts)の中で学び成長する機会を探求する好奇心が含まれます。」
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https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32018H0604(01)
スペイン
スペインでは、人的・社会的・「学び方の学び」の能力(Competencia personal, social y de aprender a aprender)について、次のとおり定めています。
人的・社会的・「学び方の学び」の能力(Competencia personal, social y de aprender a aprender)
個人的、社会的、そして学び方を学ぶ能力とは、自分自身について考察し、自己認識を深め、自己を受け入れ、継続的な自己成長を促進する能力、時間と情報を効果的に管理する能力、他者と建設的に協力する能力、レジリエンスを維持する能力、そして生涯にわたる学習を管理する能力を意味します。また、不確実性や複雑性に対処する能力、 変化に適応すること、メタ認知的プロセスを管理することを学ぶこと、協調的な行動に反する行動を特定し、それに対処するための戦略を立てること、共同責任を通じて自分自身や周囲の人々の身体的、精神的、感情的な幸福に貢献し、自分自身や周囲の人々をケアするスキルを身につけること、将来を見据えた生活を送ること、そして共感の気持ちを表現し、包括的で支援的な環境の中で紛争に対処することなどが含まれます。
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米国(P21 Framework)
米国(P21 Framework)では、自主性と自己管理能力(INITIATIVE AND SELF-DIRECTION)について、次のとおり定めています。
自主性と自己管理能力(INITIATIVE AND SELF-DIRECTION)
目標と時間を管理する
- 具体的および抽象的な成功基準(success criteria)をもって目標を設定する
- 戦術的(短期)目標と戦略的(長期)目標とのバランスを取る
- 時間を使い、作業負荷(workload)を効率的に管理する
独立して仕事をする
- 直接の監督(direct oversight)なしに、タスクを監視し、定義し、優先順位をつけ、完了させる
自律的な学習者(self-directed learner)
- スキルやカリキュラムの基礎的な習得を超え、自らの学びと、専門性を高める機会を探求し、拡大する
- スキルのレベルをプロフェッショナルレベルへ高めるための自発性を示す
- 生涯にわたる学習プロセスへの取り組みを示す
- 過去の経験を批判的に振り返り、将来の進歩に活かす
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https://files.eric.ed.gov/fulltext/ED519462.pdf
オーストラリア
オーストラリアでは、人的・社会的能力(Personal and Social Capability)というコンピテンシーの説明の中で、「自己認識」(Self-Awareness)と「自己管理」(Self-Management)について次のとおり定めています。
「自己認識」(Self-Awareness)と「自己管理」(Self-Management)
「自己認識」(Self-Awareness)とは、生徒が自身の気持ちの状態(emotional states)、ニーズ、視点に対する認識を深めていくことを指します。
生徒は、自身の感情的反応(emotional responses)に影響を与える要因を特定し、説明(describe)します。その瞬間に何を感じているかを自覚し、自身の能力を現実的に評価する(having a realistic assessment)とともに、確固たる自己理解(self-knowledge)と自信(self-confidence)を持つことで、個人の能力(abilities)、資質(qualities)、強みに対する現実的な感覚(realistic sense)を養います。生徒は、自身の学習を振り返り評価し、効果を高める、あるいは制限する個人的な特性(personal characteristics)を特定し、成功や失敗から学びます。
「自己管理」(Self-Management)については、生徒が様々な状況において自分自身を管理するために特定の戦略をいつ、どのように活用すべきかを学ぶメタ認知スキル(metacognitive skill )を育成します。
生徒は、自身の感情的反応(emotional responses)を効果的に調整(regulate)・管理(manage)・監視(monitor)し、課題の遂行や障害の克服に粘り強く取り組みます(persist)。組織化のスキル(organisational skill)を身につけ、目標達成に必要なリソースを特定します。生徒は、自立して(independently)働き自発性(initiative)を示すスキルを身につけ、誠実さ(to be conscientious)を学び、満足を後回しにし(delay gratification)、障害(setbacks)や挫折(frustrations)に直面しても粘り強く取り組む(persevere)ことを学びます。
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韓国
韓国では、「自己管理能力」について、次のとおり定めています。
自己管理能力
必要な基礎能力と資質を基盤に、自己のアイデンティティと自信を確立させ、生徒が自らの人生とキャリアを設計できるように導く自己管理能力
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台湾
台湾では、心身の素質と自己研鑽(身心素質與自我精進)について、次のとおり定めています。
心身の素質と自己研鑽(身心素質與自我精進)
心身ともに健全に発達した資質を備え、適切な人間観と自己観を持ち、新たな知識を選択・分析・活用することで、効果的にキャリア開発を計画し、生命の意義を探求するとともに、絶えず自己研鑽を積み、至善を追求します。
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ブラジル
ブラジルは、自分を理解し、心身の健康を大切にし、感情を扱う力について、次のとおり定めています。
自分を理解し、心身の健康を大切にし、感情を扱う力
自分自身を知り、愛し、身体的および精神的な健康を大切にし、人間の多様性を理解し、自己批判をもって自分自身や他者の感情を認識し、それらに対処する能力を持つこと。
リンク
https://www.gov.br/mec/pt-br/escola-em-tempo-integral/BNCC_EI_EF_110518_versaofinal.pdf
所感
自己認識と自己管理は、ごく簡単に言うと、「自分を知り、より良い将来のために自分を成長させ、くじけずに努力する力」です。
これは「健康」に次ぐ基本的なコンピテンシーといえます。
次回に続きます。
元塾 藤本豪


