前回に続き、一つ一つのコンピテンシーの意味内容を見ていきます。

今回は、コミュニケーション(Communication)についてです。

コミュニケーションを主要コンピテンシーとして定めている国・地域・組織

このブログで取り上げた17の国、地域、組織のうち、コンピテンシーの一つとしてコミュニケーション(Communication)を挙げているのは、シンガポール、カナダ、米国(P21 Framework)、フィンランド、エストニア、アイルランド、スペイン、韓国、台湾、ケニア、インドです。

他の国においても、コミュニケーションの能力は重視されています。

カナダ

カナダでは、コミュニケーション(Communication)について、次のとおり定めています。

このブログで以前に紹介しましたが、再度載せます。)

コミュニケーション(Communication)

「コミュニケーションとは、様々な状況(contexts)、相手(audiences)、目的に応じて意味を受け取り、表現することである(例えば、読むことと書くこと、見ること(viewing)と制作すること(creating)、聞くことと話すこと)。効果的なコミュニケーションには、地域的視点と世界的視点、社会的・文化的背景(contexts)を理解することがますます求められる。そして、適切に、責任を持って、安全に、自己のデジタルフットプリントを考慮しながら、様々な媒体(media)の利用を適応させ、変化させることも、ますます求められる。」

コミュニケーションには、以下の要素が含まれます。

  • 様々な状況(contexts)において、口頭および書面で効果的かつ敬意を持ってコミュニケーションをとる。
  • 知識を得るために効果的な質問をする
  • 様々な媒体(media)を用いてコミュニケーションをとる
  • 目的と相手(audience)に応じて適切なデジタルツールを選択する
  • 全ての見解(all points of view)を理解するために耳を傾け、共感を示す
  • 先住民の言語を含む様々な言語に関する知識を習得し、カナダにおける言語の多様性の重要性を理解する
  • 意見を表明し(voice)、アイディアを主張する(advocate)
  • ポジティブなデジタルフットプリントを残す(create)

リンク

https://static1.squarespace.com/static/5af1e87f5cfd79c163407ead/t/5c6597f353450a15233b6e7c/1550161912721/Pan-Canadian+Global+Competencies+Backgrounder_EN.pdf

米国(P21 Framework)

次に、米国(P21 Framework)では、コミュニケーションについて、次のとおり定めています。

コミュニケーション(Communication)

明確なコミュニケーション

  • 様々な形式や状況(contexts)において、口頭・書面・非言語コミュニケーションのスキルを活用し、思考やアイディアを効果的に表現する(articulate)
  • 知識、価値観、態度、意図などの意味を読み解く(decipher)ために、効果的に聴く
  • 様々な目的(情報を伝える、指示する、やる気を出させる、説得する等)のためにコミュニケーションを活用する(utilize)
  • 複数のメディアや技術を活用し、それらの効果(effectiveness)を事前に判断する方法や影響(impact)を評価する方法を知る
  • 多様な(diverse)環境(多言語環境を含む)において効果的にコミュニケーションを行う

リンク

https://files.eric.ed.gov/fulltext/ED519462.pdf

フィンランド

フィンランドでは「他者との相互作用の能力」(Interaction competence)について、次のとおり定めています。

他者との相互作用の能力(Interaction competence

  • 感情と共感のスキル
  • 社会的・協働的なスキル;協働学習のスキル
  • 言語意識(language awareness)と建設的なコミュニケーションのスキル(仲介(mediation))

リンク

https://www.oph.fi/en/education-and-qualifications/transversal-competences-finnish-general-upper-secondary-education

エストニア

エストニアでは、コミュニケーション能力(communicative competence)について、次のとおり定めています。

コミュニケーション能力(communicative competence)

コミュニケーション能力とは、以下のことを行う能力を指します。

  • 母語および外国語の両方において、状況を考慮し、コミュニケーションの相手や安全性(safety)について理解した上で、明確かつ適切に、礼儀正しく自己を表現する(express oneself)こと
  • 自己紹介を行い、自身の立場を提示し、その根拠を説明すること
  • 情報テキスト(informative texts)、非文学的テキスト、文学的テキストを読み分け、理解すること
  • 適切な引用、言語的手法(linguistic devices)、適切な文体を用いて、様々な種類のテキストを作成すること
  • 言葉(language)の正確な使用と表現豊かな言葉(expressive language)、ならびに相互の合意に基づくコミュニケーションのスタイルを重視する(value)こと

リンク

https://www.riigiteataja.ee/en/compare_wordings?grupiId=100391&vasakAktId=524092014014&utm

スペイン

スペインでは、言語コミュニケーション能力(Competencia en comunicación lingüística)について、次のとおり定めています。

言語コミュニケーション能力(Competencia en comunicación lingüística)

言語コミュニケーション能力とは、口頭、書面、手話、あるいはマルチモーダルな方法で、さまざまな分野や状況、そしてさまざまなコミュニケーション目的において、一貫性があり適切な形で相互作用することを意味します。それは、口頭、書面、手話、マルチモーダルによるメッセージを理解、解釈、批判的に評価し、操作や誤報のリスクを回避するとともに、協調的、創造的、倫理的、かつ敬意を持って他の人々と効果的にコミュニケーションをとるために必要な知識、技能、態度のすべてを意識的に活用することを意味します。

これは、あらゆる知識分野における独自の思考と知識の構築の基礎となります。そのため、その発達は、各知識分野特有のジャンルにおける言語の機能、および思考と学習のための口頭、書き言葉、手話の用法について、明示的に考察することと関連しています。最後に、言語の美的側面を鑑賞し、文学文化を楽しむことを可能にします。

リンク

https://educagob.educacionfpydeportes.gob.es/curriculo/curriculo-lomloe/menu-curriculos-basicos/ed-primaria/competencias-clave/ling.html

台湾

台湾では、「記号運用とコミュニケーション表現」(符號運用與溝通表達)について、次のとおり定めています。

記号運用とコミュニケーション表現(符號運用與溝通表達)

言語、文字、数学、身体表現、芸術など様々な記号を用いて表現し、コミュニケーションをとり、相互作用する能力を有し、他者と理解し合い、日常生活や仕事に応用することができることです。

リンク

https://www.naer.edu.tw/upload/1/16/doc/288/%E5%8D%81%E4%BA%8C%E5%B9%B4%E5%9C%8B%E6%95%99%E8%AA%B2%E7%A8%8B%E7%B6%B1%E8%A6%81%E7%B8%BD%E7%B6%B1.pdf

ケニア

ケニアでは、コミュニケーションと協働(Communication and Collaboration)の中で、コミュニケーションについて、次のとおり定めています。

コミュニケーション(Communication)

コミュニケーションとは、音声的、視覚的、あるいは非言語的な方法により、情報をある場所から別の場所へ伝達する行為です。コミュニケーション学は、人々が様々な文脈、文化、伝達経路、メディアの中で、またそれらを越えて、メッセージを用いて意味を生み出す方法に焦点を当てています。この学問は、効果的かつ倫理的な人間コミュニケーションの実践を促進します。

スピッツバーグ(1988)は、コミュニケーション能力を「正確性、明瞭性、理解可能性、一貫性、専門性、効果性、適切性という観点から、他者と良好に相互作用する能力」と定義しています。一方、フリードリッヒ(1994)は、コミュニケーション能力を「現実的で適切な目標を設定し、その達成を最大化する状況に応じた能力」として理解するのが最適であると示唆しています。

この観点から、意図した通りに効果的にコミュニケーションを取れる能力は、あらゆるライフスキルの中で最も重要であると言えるかも知れません。情報がどれだけ円滑に伝達・受容されるかは、私たちのコミュニケーション能力の高さを測る尺度となります。コミュニケーション能力を養うことは、個人の生活のあらゆる側面において有益です。

リンク

https://kicd.ac.ke/wp-content/uploads/2019/08/BASIC-EDUCATION-CURRICULUM-FRAMEWORK-2019.pdf

ブラジル

ブラジルでは、多様な言語や表現手段で自分を伝え、互いに理解し合う力について、次のとおり定めています。

多様な言語や表現手段で自分を伝え、互いに理解し合う力

さまざまな言語(口頭(口頭または視覚運動、例えば手話、および書き言葉)、身体言語、視覚言語、音声言語、デジタル言語)や、芸術、数学、科学の言語に関する知識を活用し、さまざまな状況において情報や経験、考え、感情を表現・共有し、相互理解につながる意味を生み出します。

リンク

https://www.gov.br/mec/pt-br/escola-em-tempo-integral/BNCC_EI_EF_110518_versaofinal.pdf

所感

コミュニケーションの重要性については、世界中で広く認識されていることと思われます。ケニアのカリキュラム開発機構(Kenya Institute of Curriculum Development)は、「あらゆるライフスキルの中で最も重要であると言えるかも知れません」(it can be argued that being able to communicate effectively as intended is the most important of all life skills)と言っています。あらゆるライフスキルの中で最も重要というのは少し言い過ぎのように思われますが、それほど重要ということです。

なお、コミュニケーションというと口頭のコミュニケーションを思い浮かべることが多いかもしれませんが、コンピテンシーとしてのコミュニケーションは、文章によるコミュニケーションや、ジェスチャー(身体動作)や図表・画像などによるコミュニケーションを広く含みます。

次回に続きます。

元塾 藤本豪