今回から、ノルウェーの「教育及び総合的成長のための原則」として挙げられているコンピテンシーを、一つひとつ紹介していきます。

まず、社会的学習と発達(Social learning and development)について、ノルウェーの教育訓練庁の説明を紹介します。

社会的学習と発達(Social learning and development)

「社会的学習と発達」(Social learning and development)について、ノルウェー教育訓練庁は、以下のとおり説明しています。

ノルウェー教育訓練庁のウェブサイト上の説明から一部を省略して紹介します。)

「学校は、教科活動や学校における日常的な事柄を通じて、生徒の社会的学習と発達を支援し、それに貢献しなければなりません。

生徒のアイデンティティやセルフイメージ、意見や態度は、他者との関わりの中で育まれます。社会的学習は、教育や訓練だけでなく、学校におけるあらゆる活動の中で行われます。教科の学習は、社会的学習から切り離すことはできません。このことを念頭に置くと、日々の活動において、生徒の学業面と社会面での学習・発達は相互に関連している(interconnected)といえます。

他者の考えや感情、経験を理解する能力は、生徒同士の共感や友情の基盤となります。社会的学習において対話(dialogue)は極めて重要であり、学校は反対意見に対処するための傾聴を伴う対話(listening dialogue)の価値と重要性を教える必要があります。教師は生徒と関わる際、生徒が自信と勇気をもって自己の意見を表明し、他の人たちに代わって問題点を指摘できるような、コミュニケーションと協働を促進しなければなりません。他者の意見に耳を傾けること、そして自らの見解を主張すること(to argue for one's own views)を学ぶことで、生徒は意見の相違や対立に対処し、共に解決策を模索するための基盤を得ることになります。誰もが協力し、他者と共に行動し、参加と責任を担う能力を育むことを学ぶ必要があります。生徒とその家庭もまた、良好な環境と帰属意識(sense of belonging)の醸成に貢献する責任を負っています。各生徒が学校環境に貢献するように、この環境もまた個人のウェルビーイング、発達、学習に寄与するのです。

個人の良識ある判断(good judgment)が、プライバシーの保護と私生活の尊重に不可欠です。悪意のある(hateful)発言や敬意を欠く(lack of respect)言動は、学校において許容されてはなりません。生徒には思いやりのある行動(act in considerate way)を身につけさせるとともに、自らの態度に対する自覚を育む必要があります。多様なコミュニケーション形態や技術の利用は、社会的環境を豊かにすると同時に新たな課題をもたらします。全ての生徒は、学校内外を問わずあらゆる場面で責任ある行動をとることを学ぶべきです。」

所感

アイデンティティとセルフイメージ

アイデンティティ(identity)とセルフイメージ(self image)という言葉が出てきましたね。アイデンティティについては、このブログの「ノルウェーのコンピテンシー(アイデンティティと文化的多様性)」の回でお話ししました。では、アイデンティティとセルフイメージは、どう違うのでしょうか? 私(藤本)なりに調べて理解したところによると、次のとおりです。

「セルフイメージ」は主に現在の自分をどう見ているかということ、「アイデンティティ」は現在だけでなく過去や未来も含めて「自分は何者か」「どんな人間になりたいか」を自分で分かっているということです。

また、「セルフイメージ」は、外見、性格、能力などわりと表面的な部分を見ているのに対し、「アイデンティティ」は、価値観や考え方、社会における自分の役割などを含め、「自分は何者か」「どんな人間になりたいか」という問いに答えるものです。

さらに、「セルフイメージ」は純粋に自分をどう見るかということであるのに対し、「アイデンティティ」は、周り(社会)から自分がどう見られているかという面も少し含みます。自分で思っていても、周り(とくに親しい人たち)から「全然違う」と思われていたら、それはアイデンティティとして確立されないのですね。

自信と勇気をもって自己の意見を表明する

個人的に印象深かったのは、「教師は生徒と関わる際、生徒が自信と勇気をもって自己の意見を表明し、他の人たちに代わって問題点を指摘できるような、コミュニケーションと協働を促進しなければなりません。」という部分です。ノルウェーの子どもたちにとっても、自分の意見を表明することは、自信と勇気がいることなのですね。学校の先生たちによるサポートが非常に重要なんだなと、改めて思いました。

SNSの利用

最後に「多様なコミュニケーション形態や技術の利用は、社会的環境を豊かにすると同時に新たな課題をもたらします。全ての生徒は、学校内外を問わずあらゆる場面で責任ある行動をとることを学ぶべきです。」と書かれているのは、SNSなどの利用に関することと思われます。ノルウェーでも、SNSでのトラブルや「炎上」に近いような事態が起こっているのでしょうね。

次回に続きます。

元塾 藤本豪