前回に続き、民主主義と市民性(Democracy and citizenship)について、ノルウェーの教育訓練庁の説明を紹介します。

民主主義と市民性(Democracy and citizenship)

民主主義と市民性(Democracy and citizenship)について、ノルウェー教育訓練庁は、以下のとおり説明しています。

ノルウェー教育訓練庁のウェブサイト上の説明から一部を省略して紹介します。)

「学校における教科横断的テーマとしての民主主義と市民性は、生徒に民主主義の基本理念(basic tenets)とその価値観・規範に関する知識を与え、民主的プロセスへの参加に備えさせるものでなければなりません。教育と訓練は、民主主義と主要な人権(言論の自由、選挙権、結社の自由等)との関係性を生徒に理解させるものでなければなりません。また、民主主義には様々な形態と表現があるという事実について生徒が洞察を得る必要があります。

民主主義と市民性のテーマに取り組むことで、生徒は個人の権利と義務の関係性を理解するようにならなければなりません。個人には政治活動に参加する権利がある一方、社会は市民が政治参加の権利を行使し、市民社会の発展に影響を与えることに依存しています。学校は、生徒が積極的な市民(active citizens)となるよう促し、ノルウェーにおける民主主義の発展に参加する能力を身につけさせなければなりません。

教育と訓練は、民主主義の原則に沿って課題に対処するための知識と技能を生徒が身につけるものでなければなりません。生徒は、多数派の優位性(preponderance)と少数派の権利を同時に認識する際に生じるジレンマを理解しなければなりません。生徒は、批判的思考力を鍛え、意見の対立に対処し、異なる見解を尊重することを学ぶ必要があります。このテーマに取り組む過程で、生徒は民主主義が当然のものではない理由を学び、それを発展させ維持しなければならないことを理解しなければなりません。」

所感

社会は市民の政治参加に依存している

個人的には、「社会は市民が政治参加の権利を行使し、市民社会の発展に影響を与えることに依存しています。」という部分が良いと思いました。社会をつくるのは市民。当たり前のことですが、その当たり前のことが、政治参加の重要性を認識する出発点になります。

多数派 vs 少数派

「生徒は、多数派の優位性と少数派の権利を同時に認識する際に生じるジレンマを理解しなければなりません。」と書かれています。民主主義というのは、全て多数決で決める(必ず多数派が勝つ)というのではなく、また、少数派の権利が際限なく保護されるというものでもなく、多数派の事情、少数派の事情、その他様々な事情を考慮したうえで、バランスの良い判断を目指すものだと思います。そこには当然、ジレンマが生じる。そのジレンマに対処することを生徒に身に付けさせるのが目標の一つであるという意味と理解しました。

異なる見解の尊重

「生徒は、批判的思考力を鍛え、意見の対立に対処し、異なる見解を尊重することを学ぶ必要があります。」と書かれています。民主主義の基本ですね。民主主義は個人の尊厳の理念を基盤としています。人は、一人ひとり異なるから尊いのであり、互いの異なる考えを尊重しなければならない、という発想です。

民主主義を当然のものと思ってはならない

最後に、「このテーマに取り組む過程で、生徒は民主主義が当然のものではない理由を学び、それを発展させ維持しなければならないことを理解しなければなりません。」と書かれています。これも非常に重要な内容ですね。民主主義は、歴史の中で人々が勝ち取ったものであり、決して当然のものではありません。もし人々がこれを発展させ維持することを怠り、民主主義が歪んでしまった場合、そこから独裁が出現してくる可能性があるということも、歴史から分かります。

次回に続きます。

元塾 藤本豪