前回に続き、健康と生活技能(Health and life skills)について、ノルウェーの教育訓練庁の説明を紹介します。

健康と生活技能(Health and life skills)

「健康と生活技能」(Health and life skills)について、ノルウェー教育訓練庁は、以下のとおり説明しています。

ノルウェー教育訓練庁のウェブサイト上の説明から一部を省略して紹介します。)

「学校の教科横断的テーマである『健康と生活技能』は、生徒にしっかりとした心身の健康を促進する能力を身につけさせなければならず、それによって、責任ある人生の選択(responsible life choices)を行う機会を提供します。児童期および青年期においては、肯定的な自己イメージ(positive self-image)と確信をもったアイデンティティ(confident identity)の形成が特に重要です。

個人が健康についての良い選択を行う基盤を提供する社会は、健康に大きな影響を与えます。生活技能(life skill)とは、自らの人生をうまくコントロールする(mastering one’s own life)ために重要な要素を理解し、これにうまく働きかける能力を指します。このテーマは、生徒が成功や失敗、個人的・実践的な課題に最善の方法で対処することを学ぶ助けとなるものでなければなりません。

このテーマに関連する領域としては、身体的・精神的健康、生活習慣(lifestyle habits)、性およびジェンダー、薬物乱用、メディアの利用、消費、個人経済(personal economy)などが挙げられます。その他の課題としては、価値観の選択(value choices)や人生における意義(meaning in life)の重要性、他者との関係性、境界線を引く能力(ability to draw boundaries)と他者の境界線を尊重する能力、思考・感情・人間関係に対処する能力などが含まれます。」

所感

「自己イメージ」と「アイデンティティ」

「児童期および青年期においては、肯定的な自己イメージと確信をもったアイデンティティの形成が特に重要です。」と書かれています。個人的に、これは非常に重要なポイントだと考えています。子ども・若者の周囲の人全員がそれを後押しする社会でありたいものですね。

このブログの「アイデンティティと文化的多様性」の記事でお話ししたとおり、アイデンティティの確立は、ノルウェーを含む欧米諸国の教育において、とても重視されています。ところで、「アイデンティティ」と「自己イメージ」(self-image)は、どこが違うのでしょう。私(藤本)の調べたところによると、以下のとおりです。

「自己イメージ」は主に現在の自分をどう見ているかということ、「アイデンティティ」は現在だけでなく過去や未来も含めて「自分は何者か」「どんな人間になりたいか」を自分で分かっているということです。

また、「自己イメージ」は、外見、性格、能力などわりと表面的な部分を見ているのに対し、「アイデンティティ」は、価値観や考え方、社会における自分の役割などを含め、「自分は何者か」「どんな人間になりたいか」という問いに答えるものです。

さらに、「自己イメージ」は純粋に自分をどう見るかということであるのに対し、「アイデンティティ」は、周り(社会)から自分がどう見られているかという面も少し含みます。自分で思っていても、周り(とくに親しい人たち)から「全然違う」と思われていたら、それはアイデンティティとして確立されないのですね。

成功や失敗への対処

個人的には、「このテーマは、生徒が成功や失敗、個人的・実践的な課題に最善の方法で対処することを学ぶ助けとなるものでなければなりません。」という一文が気に入りました。これは生活技能(life skill)に関する文ですが、生活技能(life skill)とは、かなり広い概念のようです。どこが気に入ったかというと、失敗や課題だけでなく、「成功」についても最善の方法で対処することを学ぶべきと考えている点です。失敗から学ぶことは非常に重要ですが、成功から学ぶことも重要ですよね。

境界線を引く能力

個人的にもう一つ気に入ったのは、「境界線を引く能力と他者の境界線を尊重する能力」という部分です。これは、他人に踏み込ませない領域をきちんと確保するとともに、他人のそうした領域に踏み込まないようにする、という意味と理解しました。人間関係で余計なストレスを溜め込まないためにも、こうした能力が重要なのではないでしょうか。

次回に続きます。

元塾 藤本豪