前回までに引き続き、ノルウェーのコンピテンシーについてお話ししていこうと思いますが、前回までが「教育と訓練の核心的価値」の話で、これから「教育及び総合的成長のための原則」の話に入るので、今回は、その総論的な説明をご紹介します。

「教育及び総合的成長のための原則」(Principles for education and all-round development)
「教育及び全人的発達のための原則」(Principles for education and all-round development)について、ノルウェー教育訓練庁は、以下のとおり説明しています。
(ノルウェー教育訓練庁のウェブサイト上の説明から一部を省略して紹介します。)
「学校の使命は、全ての生徒の教育(education)と総合的成長(all-round development)(Bildung)にあります。教育と総合的成長は相互に関連し、互いに依存するものであり、それらを支える基本原則(underlying principles)は、学校がこの二重の使命(dual mission)を達成する助けとなるべきです。
初等・中等教育および訓練は、個人の総合的成長、知的自由(intellectual freedom)、自立性、責任感、そして他者への思いやり(compassion for others)を目標とする、生涯にわたる過程(lifelong process)の重要な一部です。教育と訓練は、生徒が自己、他者、世界を理解し、人生において適切な選択(good choices)を行うための確かな基盤を与えるものでなければなりません。また、教育、仕事、社会生活のあらゆる分野への参加に向けた良好な出発点を提供すべきです。同時に、子どもや若者は今この瞬間を生きている存在であり(living in the here and now)、学校は幼少期や思春期それ自体の価値(intrinsic value)を認識しなければなりません。
学校における教育は、人間としての総合的な成長を促し(develop the all-round person)、各生徒が自らの技能や能力を学び、発展させる機会を与えるものでなければなりません。このプロセスは、生徒が自然や環境、言語や歴史、社会や仕事生活(working life)、芸術や文化、宗教や世界観について知識と洞察を獲得する際に生じます。この総合的な教育(all-round education)はまた、授業(teaching)および日常の学校生活(everyday school affairs)における、経験や実践的な課題(practical challenges)を通じて達成されます。計画的で目的意識のある活動(structured and goal-oriented work)から自発的な遊び(spontaneous play)まで、幅広い活動を通じて生徒は豊かな経験を積みます。生徒はまた、他者との交流や、身体活動・美的活動(aesthetic activities)を通じて成長します。これらは運動の喜びや習得の喜びを促進するもので、個人で取り組む時にも、他者と協力する時にも起こります。教科における公式や学術的資料を用いた理論的課題(theoretical challenges)に取り組む時、また実践的なタスクを習得するために道具(tools)を用いる時にも成長します。生徒は、正しい答えを見つける方法を学ぶことで成長しますが、同時に、単純で決まった答えが常に見つかるわけではないことを理解する過程でも成長するのです。」
所感
学校の使命は、全ての生徒の教育と総合的成長
最初に、「学校の使命は、全ての生徒の教育と総合的成長にあります。」とあります。この文の「教育」(education)は、どういう意味なのでしょうね。総合的成長(all-round development)は「Bildung」を指しています。Bildungとは、もともとドイツで発展した概念で、単なる知識やスキルの取得を超えた人間形成のことです。とすると、この文の「教育」(education)とは、知識やスキルを身に付けてもらうための教育を指しているのでしょうか。
子どもや若者は今この瞬間を生きている存在
個人的に、「子どもや若者は今この瞬間を生きている存在であり、学校は幼少期や思春期それ自体の価値を認識しなければなりません」という部分が、とてもいいなと思いました。教育というと、将来に備えて知識やスキルを身に付けるとか、能力を伸ばす、あるいは人格を陶冶するといったように、将来のために今何かをするということに目が向きがちです。しかし、これが行き過ぎると、将来のために今を犠牲にすることに繋がりかねません。子どもや若者は今この瞬間を生きている存在であり、幼少期や思春期それ自体の価値を認識しなければならない、という言葉は重いです。子どもの若者の教育について考えるときは、この視点を決して疎かにしてはならないと思いました。
「正解」のない問題を通じた成長
最後に、「生徒は、正しい答えを見つける方法を学ぶことで成長しますが、同時に、単純で決まった答えが常に見つかるわけではないことを理解する過程でも成長するのです。」と書かれています。単純で決まった答え(いわゆる「正解」)のない問題に直面し、それと向き合うことも、成長のために重要だということですね。
次回から、個々のコンピテンシーについての説明を紹介していきます。
元塾 藤本豪


