前回の続きです。

THE STRAITS TIMESの記事の紹介に戻ります。2025年5月までシンガポールの教育相であったChan Chun Sing氏が、シンガポールの教育システムの歴史について振り返り、将来への展望を語っている記事(2025年2月14日の記事)です。

https://www.straitstimes.com/opinion/spores-pursuit-of-excellence-needs-open-meritocracy-a-broader-definition-of-success-chan-chun-sing

シンガポール教育相による現状認識

2025年5月までシンガポールの教育相であったChan Chun Sing氏は、シンガポールの教育について、以下のように語っています。

① ソーシャルメディアの普及により、情報を選択するだけでなく、真実、情報の質、関連性を判断する能力がますます重要になっている。

② AIの技術を活かすことができれば、潜在能力を超える成果を挙げることができる。しかし、この波に乗れなければ、取り残されるであろう。

③ 保護主義が世界的に高まっている。シンガポールは、他国とパートナーシップを築くために倍の努力をしなければならない。

シンガポール教育相の考え

また、Chan Chun Sing氏は、以下のとおり語っています。

「学生に過度のプレッシャーをかけることを避ける必要がある。」

「OECDが実施するようなテストは、現在の能力を測定するものであるが、未来に必要な新しいスキルを測定することはできない。」

「学生が潜在能力を最大限に発揮できるよう支援する一方で、学校教育において成績に過度に焦点を当てたり、エリート育成に走ったりすることは、好奇心や学びへの愛を潰すことになる。」

「真のテストは、生徒たちが学校での最初の15年間で互いを上回るかどうかではなく、次の50年間で自分自身を不断に超えていくかどうかである。」

(藤本)シンガポールはPISAのスコアにおいて常にトップクラスの国ですが、上記の発言には、PISAや学校の成績で測れないスキルや態度をもっと重視すべきであるという考えが、危機感をともなって表れているように思います。

今後進める2つの転換

そのうえで、Chan Chun Sing氏は、次の2つの転換を進めると述べています。

(1) 多様な能力、ニーズ、興味、志向に応じた教育の個別化を継続的に支援する。

(2) 社会として、学校や教科書を超えた学びを積極的に取り入れる。学校が私たちの世界であってはならない。そうではなくに、世界が私たちの学校となるべきである。

そして、これらの転換を進める中でも、二言語主義(bilingualism)は、シンガポールの教育システムの基盤として維持されなければならない、と述べています。

(藤本)(1)は、学校で伝統的に教えられてきた知識・技能に限らず、様々なことを学ぶ機会を、一人ひとりに提供するということですね。(2)は、教育に関するすべての責任を学校に負わせるのではなく、社会全体で学びの機会を提供するということだと理解しました。「学校が私たちの世界であってはならない。そうではなく、世界が私たちの学校となるべきである。」(The school cannot be our world; instead, the world should be our school. )というのは、名言ですね。この言葉、大好きです。あと、ここでわざわざ二言語主義(バイリンガル主義)の必要性を強調しているということは、二言語主義がそれだけシンガポールにとって重要ということなのだと思います。おそらく、国としてのまとまりをつくるという面でも、経済発展の面でも重要なのでしょう。

次回に続きます。

元塾 藤本豪