前回、シンガポールでは2023年に「強化された21世紀のコンピテンシー」(The Enhanced 21st Century Competencies)が導入されたと書きました。THE STRAITS TIMESの記事から一旦離れますが、今回はこの「強化された21世紀のコンピテンシー」をご紹介します。

シンガポールの教育システムはどのような人を育てようとしているのか

シンガポールの教育システムが育てようとしているのは、次のような特徴をもつ人々です。

  • 自信をもつ個人(confident persons): 人生への情熱を持ち、善悪の強い意識をもち、適応力と強靭性をもち(adaptable and resilient)、自己理解が深く、判断力が鋭く、独立的(independently)かつ批判的(critically)に考え、効果的にコミュニケーションをとることができる。
  • 自己主導型(self-directed)の学習者: 自分自身の学びに責任をもち、好奇心があり、思慮深く(reflective)、生涯にわたる学びの追求に情熱と目的をもって粘り強く取り組む。
  • 積極的な貢献者: 共感的な、開かれた心をもち(open-minded)、チームで効果的に協働し、自主性を発揮し(exercise initiative)、責任をもってリスクをとる勇気があり、革新的で(innovative)、卓越性を追求する(strive for excellence)。
  • 関心をもつ市民(concerned citizens): シンガポールに根ざし、強い市民意識を持ち、家族、地域社会、国家に対して責任を果たし、他者の生活の向上に積極的に貢献する。

生徒たちがこのような人に育つよう、シンガポールの教育省は、2010年に、未来に備えるために育成すべき重要な能力のリストを特定しました。これが「21世紀のコンピテンシー」です。

いかがでしょう。子どもや若者がこういう大人に育ってくれれば、将来の状況がどのように変わったとしても、その人は社会の中で力強く活躍していってくれるはず、と思わせてくれるような内容だと思いませんか? 

実は、教育の目標としての上記のような人物像は、シンガポールだけでなく教育に力を入れている国々の間でほぼ共通しており、いわゆる「グローバルスタンダード」に近い内容といえます(もちろん、国によって特徴やニュアンスの違いはありますが。)。

こうした人物像は、「子どもや若者がどのような人物に育ってくれれば、未来の社会で活躍し、ウェルビーイング(持続的な幸せ)を実現できるだろうか。」という観点から、各国の教育学者や教育実務者が研究と検討を重ねたうえでの、現時点の結論です。個人的には、いわば知恵の結晶のようなものであると思っており、自分の行う教育活動の中で、目標として常に頭に入れておきたいと考えています。

次回に続きます。

元塾 藤本豪