前回に続き、2025年5月までシンガポールの教育相であったChan Chun Sing氏の発言(THE STRAITS TIMESの2025年2月14日付け記事)の紹介です。

シンガポールの教育相が考える将来の展望

Chan Chun Sing氏は、シンガポールの教育システムの将来の展望について、以下のように述べています。

「私たちは、卓越性を追求する姿勢(pursuit of excellence)を維持しつつ、開かれた、継続的で、思いやりのある能力主義(open, continuous and compassionate meritocracy)を堅持しなければならない。」

「『十分良い』(“good enough”)で満足してはならない。私たち一人一人が、学問の分野であれ、他の分野であれ、自身の可能性を最大限に発揮する(fulfil our fullest potential)よう努めなければならない。」

「不確実な世界において、私たちは、単に『同じことを適切に』行うのではなく、『正しいこと(right thing)を適切に』行うことを求められる。」

「社会が教育者への尊重を示すかどうかが、教育者の質を決定し、それが教育システムの質を形づくる。」

「教育は本質的に人間的な取り組みである。それは人々を導き、価値観、生活スキル、国民意識、そして人々の結束感を育むものである。したがって、資金や技術だけでは、教育者が提供する指導や個人的なつながりを代替することはできない。教育者に対する私たちの態度と行動が、次世代の教育に携わる人々の質を決定する。」

「生徒は常に私たちの教育システムの中心にある。(中略) 私達に課せられた任務は、すべての生徒が、そのニーズに応じて教育を受ける権利を保障する任務、内面の強さ(strength of character)を育む任務、そして、彼らが自身の夢を実現できる環境を創造する任務である。」

(藤本)能力主義(meritocracy)については世界中で批判的な言説も多いのですが、清々しいほど前面に押し出していますね。これはおそらく、人口の少ない都市国家だからできることで、日本を含め多くの国では無理でしょうね(こんなことを言ったら叩かれる。)。『十分良い』で満足してはならない、という前進に向けたアグレッシブさは、成果を上げるためには重要ですね。「社会が教育者への尊重を示すかどうかが、教育者の質を決定し、それが教育システムの質を形づくる。」というのは、本当にそうだなと思います。これは日本の社会も変わっていってほしい。そして最後に、生徒の内面の強さ(strength of character)を育むことを任務として位置づけていることが、印象的でした。生徒の内面を強くすることが教育目標として重視されているのです。「能力主義」「『十分良い』で満足してはならない」「内面の強さを育む」という、まるでアスリートの世界のような教育観です。このアグレッシブさがシンガポールの教育の強さであり、シンガポールという国の強さに繋がっているのかも知れないと思いました。

次回に続きます。

元塾 藤本豪