前回に続き、OECDのSkills that Matter for Success and Well‑being in Adulthood(成人期の成功とウェルビーイングにとって重要なスキル)という報告書(「本報告書」)について紹介します。
「成人集団における社会情動的スキルの分布状況は?」(How are social and emotional skills distributed in the adult population?)という章の紹介の続きです。

成人集団における社会情動的スキルの分布状況は?
リンク:
OECD (2025), Skills that Matter for Success and Well-being in Adulthood: Evidence on Adults' Social and Emotional Skills from the
2023 Survey of Adult Skills, OECD Skills Studies, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/6e318286-en.
原著作と翻訳の間に相違がある場合、原著作の文言のみが有効とみなされます。
移民背景に関連する社会情動的スキルの差異
「移民背景を持つ成人と持たない成人との間で、ビッグファイブの領域に差異が生じると予想される理由はいくつかあります。移住はしばしば高度に選択的なプロセスであり、動機付け、リスク許容度、回復力、新たな環境への適応能力といった要因によって形作られます。これらの特性は、ビッグファイブの次元と密接に関連している可能性があります。実際、実証研究によれば、開放性と外向性は、国境を越えた移住および国内移住の傾向と正の相関を示しています(Crown, Gheasi and Faggian, 2020[21]; Fouarge, Özer and Seegers, 2019[22])。また、開放性は、文化的に遠い国への移住意欲とも正の関連性があることが示されています(Fouarge, Özer and Seegers, 2019[22])。」(96頁)
「さらに、移住経験そのものが、時間の経過とともに社会情動的スキルの発達や発現に影響を与える可能性があります。移住の性質(自発的か強制的か)、ストレスや不確実性にさらされる可能性、新たな文化への統合のプロセスは、移住者およびその子孫の社会情動的な成果を形成する上で重要な役割を果たします。おそらく、移住者の社会情動的スキルに影響を与える最も重要な要因は、彼らの文化的背景です。受け入れ国において支配的な価値観、規範、社会的役割、ならびに移民が社会化された社会経済的条件は、幼少期からの彼らの社会情動的スキルの発達に影響を与えます。」(96頁)
「2023年成人スキル調査の結果は、多くの国や経済圏において、国内生まれの成人と外国生まれの成人との間に、ビッグファイブの領域における体系的な差異が存在することを明らかにしています(図4.9)。これらの差異は、協調性、勤勉性、開放性の領域で特に顕著であり、他の特性を考慮した後でも、外国生まれの成人の平均スコアが、ほとんどの国や経済圏で高い傾向にあります。例外としてエストニアが挙げられ、同国では外国生まれの成人が、協調性および開放性において、平均的に国内生まれの成人よりも低いスコアを示しています。イタリアおよびラトビアにおいても、外国生まれの成人は国内生まれの人口と比較して、開放性の平均レベルが低いと報告されていますが、他の特性を調整した後では、これらの差異はいずれも統計的に有意ではありません。」(96頁)
教育達成度(educational attainment)に関連する社会情動的スキルの差異
「本節では、教育達成度の水準間における社会情動的スキルの差異を検証します。特定の社会情動的スキルを有する人は高等教育を追求し、成功する可能性が高いため、こうした差異は予想されるものです。勤勉性や開放性に関連するスキルは学業的成功に寄与することが知られており、長期的に教育選択に影響を与える可能性が高いと考えられます。これらのスキルを持つ個人は学業成績が優れる傾向にあり、教育を個人的および職業的成長への道として重視する傾向が強いことが示されています(OECD, 2024[19])。その結果、高い教育達成度は、教育制度の中で継続し成功する人々の社会情動的特徴を反映している可能性があります。」(98頁)
「同時に、教育環境そのものが、社会情動的スキルの発達に直接寄与する可能性があります。体系的な課題への取り組み、長期的な目標設定、協働、新たなアイデアへの接触を通じて、正式な教育は、勤勉性、経験への開放性、情緒安定性といったスキルの強化に寄与し得ます。さらに、より高い教育水準を有する個人は、より広範な社会的ネットワーク、多様な職業機会、ならびに仕事における自律性へのアクセスを有することが多いとされています。こうした条件は、特定の社会情動的スキルの発達と発現をさらに促進する可能性があります。」(98頁)
教育程度の高い成人(highly educated adults)は、教育程度の低い成人(lower educated adults)と比較してビッグファイブ全領域で高いスコアを示す傾向がある
「2023年成人スキル調査の結果によると、高等教育を受けた成人は、中等教育以上の学歴を持たない成人と比較して、情緒安定性、外向性、経験への開放性において高いスコアを示す傾向があります(図4.11)。例外としてノルウェーとスウェーデンが挙げられ、これらの国では情緒安定性における差は有意ではありません。同様に、チェコ、ポルトガル、スウェーデンでは、外向性において有意な差は観察されていません。」(98頁)
「協調性と勤勉性の領域では、教育程度の高い成人と教育程度の低い成人との間の差は比較的小さく、差異が観察される国も限られています。16の国・地域では、高等教育を受けた成人が協調性において有意に高い水準を示しており、19の国ではこのグループが勤勉性においてより高いスコアを記録しています。一方、オーストリアでは、中等教育以上の学歴を持たない成人が、高等教育を受けた成人よりも勤勉性においてやや高いスコアを示しています。」(98頁)
「一部の国や経済圏では、年齢などの要因を調整した後、教育達成度による社会情動的スキルの差は小さくなるか、または有意でなくなります。これは、こうした状況において観察される差異が、教育グループ間の社会人口統計学的構成の違いに部分的に起因していることを示唆しています。」(98頁)
所感
「2023年成人スキル調査の結果は、多くの国や経済圏において、国内生まれの成人と外国生まれの成人との間に、ビッグファイブの領域における体系的な差異が存在することを明らかにしています(図4.9)。これらの差異は、協調性、勤勉性、開放性の領域で特に顕著であり、他の特性を考慮した後でも、外国生まれの成人の平均スコアが、ほとんどの国や経済圏で高い傾向にあります。」とのことです。
ひとくちに移民といっても様々な移民がいますので、大事なのは個々の人がどうかということだと思いますが、大きな傾向としては、外国生まれの人のほうが、調査対象国のほとんどにおいて、協調性、勤勉性、開放性に優れるとのことです。
次回に続きます。
元塾 藤本豪


