前回に続き、OECDのSkills that Matter for Success and Well‑being in Adulthood(成人期の成功とウェルビーイングにとって重要なスキル)という報告書(「本報告書」)について紹介します。

「仕事や生活において、社会情動的スキルはどのように報われるのか?」(How are social and emotional skills rewarded in work and life?)という章の紹介の続きです。

仕事や生活において、社会情動的スキルはどのように報われるのか?

リンク:

https://www.oecd.org/en/publications/skills-that-matter-for-success-and-well-being-in-adulthood_6e318286-en.html

OECD (2025), Skills that Matter for Success and Well-being in Adulthood: Evidence on Adults' Social and Emotional Skills from the

2023 Survey of Adult Skills, OECD Skills Studies, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/6e318286-en.

原著作と翻訳の間に相違がある場合、原著作の文言のみが有効とみなされます。

社会情動的スキルは個人と社会のウェルビーイングにどう関わるのか?

「2023年成人技能調査の結果は、ビッグファイブの技能領域が個人の総合的な生活満足度と関連していることを示しています。多くの場合、その関連性は認知能力よりも強いものとなっています(図3.10)。情緒安定性は、認知能力や教育達成度といった要因を考慮した後でも、生活満足度と強く一貫した正の相関関係を示しています。OECD全体の平均では、この領域が1標準偏差高いことは、生活に満足している可能性が9パーセントポイント高いことに相当します。外向性もすべての国において生活満足度と正の相関関係を示しており、1標準偏差の差は平均して3パーセントポイントの上昇に対応します。比較として、リテラシーは29か国中19か国で生活満足度と正の相関関係を示しており、1標準偏差の上昇は平均して3パーセントポイント高い満足確率に対応します。」(71頁)

「協調性と勤勉性も、多くの国で生活満足度と正の相関関係を示しています。具体的には、協調性は20か国、勤勉性は16か国で確認されています。ただし、これらの相関の大きさは、他の領域と比べるとやや弱い傾向にあります。経験への開放性は、ごく一部の国でのみ役割を果たしているようであり、イスラエル、リトアニア、シンガポールでは生活満足度と正の相関を示す一方、フランス、ドイツ、スウェーデンでは負の相関を示しています。」(71頁)

市民参加と政治的効力感

「2023年成人技能調査は、政治的効力感(political efficacy)、すなわち政治的事象に影響を与える自身の能力に対する確信に関する成人の認識と、慈善団体、政党、労働組合、その他の非営利組織における無償活動を含むボランティア活動への参加状況に関する情報を提供しています(ボックス3.3参照)。ほとんどの国では、成人の社会情動的スキルとボランティア活動への参加との間に、統計的に有意な関連性が認められます(図3.12)。一方で、これらのスキルが政治的効力感の形成に果たす役割は、限定的であるように見受けられます(図3.13)。」(75頁)

「ほとんどの国や経済圏において、外向性や経験への開放性が高いほど、認知能力や教育達成度などの他の要因の影響を除いた場合でも、ボランティア活動を行う確率が高くなります(図3.12)。これらの関係性の大きさは、リテラシーの習熟度との関連性と同程度です。OECD平均では、外向性が1標準偏差増加するとボランティア活動への参加確率が4パーセントポイント上昇し、経験への開放性が同程度増加すると3パーセントポイント上昇します。一方、リテラシーが1標準偏差向上すると、OECD諸国平均でボランティア活動への参加可能性が3パーセントポイント高まります。」(75頁)

「協調性と情緒安定性は、一部の国においてのみ役割を果たしています。情緒安定性が高いほど、オーストリア、ドイツ、イスラエル、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペインでは、ボランティア活動に参加する可能性がやや高くなります。協調性は11カ国において、弱いものから中程度の正の相関関係を示しています。これに対して、勤勉性は8カ国でボランティア活動と負の関連性を示していますが、韓国では正の相関関係が認められます。」(75頁)

「ボランティア活動は通常、社会的な環境の中で行われ、政治的、社会的、文化的な課題に向けられ、一定の自主性と内発的動機を必要とします。外向的な個人は社交的でエネルギッシュであり、集団活動に惹かれる傾向があるため、これがボランティア参加率の高さを説明し得ます。同様に、新しい経験への開放性は、好奇心、幅広い関心、新たなアイデアや環境を探求する意欲と結びついており、これら全てがボランティア活動への参加を促す可能性があります。協調性の高い個人は、慈愛や他者への配慮の表れとしてボランティア活動を行う傾向が強く、情緒安定性の高い個人は、人前で話すことや対立への対処といった、ボランティア活動に伴う潜在的な課題を克服する能力に優れている可能性があります(Ackermann, 2019[27])。一方で、勤勉性の高い個人は一般に効率的かつ現実的であり、即時的な報酬が得られないボランティア活動よりも、仕事や家族に関する責任を優先する傾向があります。」(75頁)

「図3.13は、成人の社会情動的スキルと政治的効力感との関連性が、より限定的で文脈に依存していることを示しています。ほとんどの国・経済圏において、新しい経験に対してより開かれた成人は、他の要因が一定である場合、政治情勢に影響を与えることができると信じる傾向がやや強くなっています。こうした成人は、好奇心が強く抽象的な概念に関心を持つ傾向があり、これらの特性が政治的話題への関与や民主的プロセスへの理解を深め、政治生活において自身の声が重要であるという信念を強化する可能性があります。約半数の国・地域では、協調性の高さも政治的効力感と関連しています。この技能領域は共感や協調を特徴としており、個人の地域社会への帰属意識や社会的責任感を高める可能性があります。また、約3分の1の国では、情緒安定性と政治的効力感との間に正の相関関係が認められます。」(78頁)

所感

情緒安定性と外向性は生活満足度と正の相関関係を持ち、協調性と勤勉性も、比較的弱いながらも多くの国で生活満足度と正の相関関係が見られるとのことです。

ボランティア活動の参加との相関関係については、外向性、経験への開放性、協調性、情緒安定性につき正の相関関係が見られるとのことです。

この点、勤勉性は8カ国でボランティア活動と負の関連性を示しているものの、韓国では正の相関関係が認められる、というのが面白いと思いました。本報告書でにおいて日本は調査の対象外ですが、もし日本で調査したら、どうなるでしょうか。

なお、社会情動的スキルと政治的効力感(政治的事象に影響を与える自身の能力に対する確信、つまり、自分は政治を変えることができることができると考えている度合い)との関連性は弱いとのことです。

次回に続きます。

元塾 藤本豪