今回から、OECDのSkills that Matter for Success and Well‑being in Adulthood(成人期の成功とウェルビーイングにとって重要なスキル)という報告書(「本報告書」)の内容を紹介していきます。

これは2025年の10月に出た報告書で、興味深い内容がたくさん含まれています。

OECDのSkills that Matter for Success and Well‑being in Adulthood(成人期の成功とウェルビーイングにとって重要なスキル)

本報告書は、認知的スキル(リテラシー、計算能力、問題解決能力)と社会情動的スキル(協調性、勤勉性、情緒的安定性、外向性、新しい経験への開放性)が互いに独立して雇用と社会的成果にどのように寄与するか、また社会情動的スキルが教育や主要な情報処理スキルの習得とどのように関連するかを探求し、また、社会情動的スキルが成人人口全体にどのように分布しているかを明らかにするものです。

簡単に言えば、協調性、勤勉性、情緒的安定性、外向性、新しい経験への開放性といった社会情動的スキル(social and emotional skills)が、仕事や個人の成長など様々な場面でどのようにプラスに働いているのか、そして、社会情動的スキルを伸ばすための政策としてどのような支援が考えられるかを示す報告書です。

本報告書は、2023年に実施された成人技能調査(OECD国際成人能力評価プログラム(PIAAC)の一環)の結果を分析して、2025年10月に出されたものです。

リンク:

https://www.oecd.org/en/publications/skills-that-matter-for-success-and-well-being-in-adulthood_6e318286-en.html

本報告書の全体の構成

本報告書の全体の構成は次のとおりです。

序文

要旨

1 社会情動的スキルとは何か、なぜ重要なのか?

2 社会情動的スキルは教育や認知スキルにとってどのように重要なのか?

3 仕事や生活において、社会情動的スキルはどのように報われるのか?

4 成人集団における社会情動的スキルの分布状況は?

5 政策はどのようにして全ての人の社会情動的学習を支援できるか?

本ブログでは、次回から、これらのうち1から5に書かれた内容のうち特に興味深いと思ったものを、紹介していきます。

序文より

本報告書の序文には、下記のことが書かれています。

リンク:

https://www.oecd.org/en/publications/skills-that-matter-for-success-and-well-being-in-adulthood_6e318286-en.html

OECD (2025), Skills that Matter for Success and Well-being in Adulthood: Evidence on Adults' Social and Emotional Skills from the

2023 Survey of Adult Skills, OECD Skills Studies, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/6e318286-en.

原著作と翻訳の間に相違がある場合、原著作の文言のみが有効とみなされます。

「急速な技術変化、複雑な地球規模の課題、進化する労働市場が特徴的な現代社会において、大人が活躍するためには幅広いスキルセットが必要です。読み書きや計算といった認知スキルが依然として不可欠である一方で、協調性、適応力、感情の管理、粘り強さといった社会情動的スキルが、生涯にわたる成功と幸福にとって極めて重要であると認識されつつあります。」

「2023年成人技能調査(OECD国際成人能力評価プログラム(PIAAC)の一環)は、こうした技能を測定・理解するOECDの取り組みにおいて重要な前進を示すものです。本調査では初めて、リテラシー、数的能力(numeracy)、適応的問題解決能力に関する国際的評価に加え、社会性・情緒的スキルに関する自己申告式の測定項目が導入され、成人の生活を形作る能力について、より包括的な全体像を提供しています。」

「本PIAACテーマ別報告書は、こうした技能が人口全体にどのように分布しているか、また雇用や賃金から健康、生活の満足度、市民参加に至るまで、幅広い成果とどのように関連しているかについて、新たな国際的証拠を提示しています。調査結果は、社会情動的スキルが認知的技能を補完し、それ自体が職場内外における成人の成功に寄与することを強調しています。」

「本報告書はまた、成人期を通じてこれらのスキルを育成することへの政策的な関心の再活性化を求めています。社会情動的スキルの構築と維持は、個人が変化に適応し、社会的結束を強化し、包摂的な成長を促進するのに役立ちます。したがって、成人がこれらのスキルを育むことを支援することは、個人の幸福だけでなく、より回復力があり公平な社会への投資でもあります。」

所感

協調性、勤勉性、情緒的安定性、外向性、新しい経験への開放性といった要素は、日本では「非認知能力」と呼ばれることが多いですが、OECDではこれらのような要素を「社会情動的スキル」(social and emotional skills)と読んでいます。(最近は日本でも「社会情動的スキル」という呼び方が徐々に増えています。)

これらは広い意味での「能力」ですが、OECDが能力ではなくスキルと読んでいるのは、これらの要素は先天的なものでなく、教育などの力によって伸ばすことができるということを強調したいからなのかも知れません。

本報告書の序文には、「本報告書はまた、成人期を通じてこれらのスキルを育成することへの政策的な関心の再活性化を求めています。」と書かれています。社会情動的スキルは、成人期になっても育成することができるということです。個人的に、この部分が非常に興味深いと思いました。

次回に続きます。

元塾 藤本豪