前回に続き、OECDのEducation Policy Outlook 2025の内容を紹介します。

今回は、まとめです。

OECDのEducation Policy Outlook 2025(まとめ)

前回まで、OECDのEducation Policy Outlook 2025(「本報告書」)のうち特に興味深いと感じた内容を紹介してきました。

本報告書は、個人が特に学習を受け入れやすい、あるいは学習意欲を失うリスクが高い、そして的確な政策支援が最大の効果を発揮し得ると考えられる、人生における4つの重大な節目について、各国の施策や取り組みに触れながら、有効な施策を探求するものです。

それぞれの節目において、効果的な学びのスタイルが大きく異なっていることが、とても印象的でした。改めて、人の人生というのは、その時期ごとに劇的に変化していくものなのだなと思いました。

本報告書で述べられている日本の取り組み

最後に、本報告書に出てくる日本の取組みを紹介します。

リンク: https://www.oecd.org/en/publications/education-policy-outlook-2025_c3f402ba-en.html

OECD (2025), Education Policy Outlook 2025: Nurturing Engaged and Resilient Lifelong Learners in a World of Digital Transformation, OECD Publishing, Paris,

https://doi.org/10.1787/c3f402ba-en.

原著作と翻訳の間に相違がある場合、原著作の文言のみが有効とみなされます。

幼児期(0-6歳)

「日本の幼児教育カリキュラム枠組みは、幼少期の教育が生涯にわたる人格形成の基盤を育む上で極めて重要であることを強調しています。その設計において、カリキュラムは子どもが環境と積極的に関わることで主体性、没頭、好奇心を育み、意欲を高めるよう促しています。責任感、創造性、持続可能性への配慮など、生涯学習に必要な態度の発達を支援します。

また、コミュニケーション能力、探究心、身体協調性、問題解決能力といった基礎的素養の強化も目指しています。体験学習を重視し、メタ認知的意識や初期段階の批判的思考の発達を支援します。この政策設計では、支援的な日常のルーティンや環境づくりを施設に促すことで、学習手段の確保にも取り組んでいます。

デジタルツールへの依存度は高くないものの、現実世界の体験を代替するのではなく補完するために活用する指針を示しています。各教育現場は、自らの状況や能力に合わせて実施内容を適応させます。

出典:文部科学省「The National Curriculum Standard for Kindergartens」https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/ icsFiles/afieldfile/2019/10/11/1401777_002.pdf」(46頁)

「実施と多層的ガバナンス構造を支えるために、幅広い関係者が関与しています。日本では「児童福祉基本法」において、国・地方自治体、家族、市民社会、子ども・若者が重要な主体であるとされています。」(49頁)

「ノルウェーや日本では、保育士数や基準といった構造的手段と、遊び・好奇心・探求を促進する教育法が組み合わされています。」(50頁)

キャリア中期(35-44歳)

「アクセスと参加に関する政策は、学習への実践的障壁(資金、時間、情報、ガイダンス、提供形式)の除去に焦点を当てています。これらは参加を促す『手段』ですが、意識啓発キャンペーン、社会的証明、スティグマ軽減など、成人の参加意欲を強化する行動的要素を組み込むケースも多く見られます。エストニア、フィンランド、ノルウェー、スロベニアの広報活動や、日本の「学習への内発的動機付けを尊重する」方針などが例として挙げられます。」(121頁)

「仕組みと施策としては、財政的インセンティブが最も一般的な手段であり、バウチャー、補助金、奨学金、学生金融(例:オーストリア、フランドル地域(ベルギー)、アイスランド、ルクセンブルク、ポルトガル、スウェーデン)などが含まれます。オランダ、ポーランド、トルコなどの制度では、雇用主の共同投資を促進するために賦課金ベースの訓練基金を活用しており、オーストリア、ルクセンブルク、日本などは補助金と税制優遇に依存しています。」(122頁)

「日本とトルコにおける雇用主の共同資金調達スキームは、特に自動化や新技術への適応を進める産業において、企業内スキル向上を持続させるのに役立っています。」(127頁)

「オランダ、ポーランド、トルコは、セクター評議会や共通研修マニュアルなどのガバナンスツールを開発しており、日本は職場における研修に関する労使協力のガイドラインを策定しました。」(127頁)

定年直前期(55-65歳) 

(成人学習への参加率について)若年層と高齢層の間の格差が最も大きいのはカナダ、チリ、シンガポールであり、日本、韓国、ニュージーランドでは比較的差が小さいです。(133頁)

「ノルウェーの三者間包括的職場協定、米国のAARP雇用主誓約、スロベニアの企業レベルの年齢管理戦略、日本の段階的退職制度などの政策は、メンタリング、柔軟な勤務時間、フルタイムからパートタイムへの段階的移行を促進しています。」(139頁)

所感

一概に言えないとは思いますが、こうして見ると、日本の施策や取り組みの強い部分と弱い部分が分かるように思います。

まず、幼児期の教育は、世界基準で見て非常に優れているようです。

次に、青年期中期から後期(10-16歳)の教育については、本報告書には日本の施策や取り組みについて全く言及がなく、本報告書の観点からは、目立った施策・取り組みが見られないようです。

キャリア中期(35-44歳)の教育については、「学習への内発的動機付けを尊重する」方針や、補助金、税制優遇等について紹介されています。

定年直前期(55-65歳)については、段階的退職制度について紹介があるのみです。なお、成人学習への参加率について、日本は若年層と高齢層の間の格差が小さいと指摘されていますが、そもそも日本における成人学習への参加率は全ての年齢層においてOECD平均を下回っているので、誇れることではないです。

以上で、OECDのEducation Policy Outlook 2025についての紹介を終わります。

元塾 藤本豪