前回の続きです。
長々と続いてきた、私(藤本)が思うところの「標準的な主要コンピテンシー」についての各国紹介も、今回が最後となりました。今回は、健康(Health)についてです。

健康(Health)
このブログで取り上げた17の国、地域、組織のうち、コンピテンシーの一つとして健康(Health)を挙げているのは、ノルウェー、米国(P21 Framework)、アイルランド、エストニア、ブラジル、インドです。
ただし他にも、たとえばカナダは「自己認識と自己管理」、オーストラリアは「人的・社会的能力」というように、他の枠組みの中で定めている国が多いです。
ノルウェー
ノルウェーは、「健康と生活技能」(Health and life skills)について、次のとおり定めています。
健康と生活技能(Health and life skills)
学校の教科横断的テーマである『健康と生活技能』は、生徒にしっかりとした心身の健康を促進する能力を身につけさせなければならず、それによって、責任ある人生の選択(responsible life choices)を行う機会を提供します。児童期および青年期においては、肯定的な自己イメージ(positive self-image)と確信をもったアイデンティティ(confident identity)の形成が特に重要です。
個人が健康についての良い選択を行う基盤を提供する社会は、健康に大きな影響を与えます。生活技能(life skill)とは、自らの人生をうまくコントロールする(mastering one’s own life)ために重要な要素を理解し、これにうまく働きかける能力を指します。このテーマは、生徒が成功や失敗、個人的・実践的な課題に最善の方法で対処することを学ぶ助けとなるものでなければなりません。
このテーマに関連する領域としては、身体的・精神的健康、生活習慣(lifestyle habits)、性およびジェンダー、薬物乱用、メディアの利用、消費、個人経済(personal economy)などが挙げられます。その他の課題としては、価値観の選択(value choices)や人生における意義(meaning in life)の重要性、他者との関係性、境界線を引く能力(ability to draw boundaries)と他者の境界線を尊重する能力、思考・感情・人間関係に対処する能力などが含まれます。
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米国(P21 Framework)
米国(P21 Framework)は、「健康リテラシー」(Health Literacy)について、次のとおり定めています。
健康リテラシー(Health Literacy)
- 基本的な健康情報とサービスを収集し、解釈し、理解すること、そしてそのような情報とサービスを健康増進に役立てること
- 適切な食事、栄養、運動、リスク回避、ストレス軽減を含む、身体的・精神的健康の予防策を理解すること
- 入手可能な情報を利用して、適切な健康関連の判断を行うこと
- 個人および家族の健康目標を設定し、その達成状況を把握すること
- 国内および国際的な公衆衛生と安全に関する問題を理解すること
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https://files.eric.ed.gov/fulltext/ED519462.pdf
エストニア
エストニアは、「健康と安全」(health and safety)について、次のとおり定めています。
健康と安全(health and safety)
健康と安全 – 生徒が精神面、感情面、社会面、身体面で健康な社会の構成員へと成長し、健康的な生活様式を実践し、安全な行動を取り、健康増進環境の構築に参加できる能力を養うことを目的とします。
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アイルランド
アイルランドは、「健康を維持する」(Staying Well)について、次のとおり定めています。
健康を維持する(Staying Well)
- 健康で、身体的に活発であること
- 社交的であること
- 安全であること
- 精神性を大切にすること
- 自信を持つこと
- 学習に対して前向き(positive)であること
- デジタル技術の利用において、責任を持ち、安全かつ倫理的に行動すること
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https://assets.gov.ie/static/documents/framework-for-junior-cycle-2012.pdf
ブラジル
ブラジルは、自分を理解し、心身の健康を大切にし、感情を扱う力について、次のとおり定めています。
自分を理解し、心身の健康を大切にし、感情を扱う力
自分自身を知り、尊重し、身体的および感情的な健康を大切にし、人間の多様性を理解し、自分自身や他者の感情を認識し、自己批判とそれらに対処する能力を持つ。
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https://www.gov.br/mec/pt-br/escola-em-tempo-integral/BNCC_EI_EF_110518_versaofinal.pdf
所感
身体的及び精神的健康は、全てのコンピテンシーが発揮される基盤ですので、極めて重要ですね。
身体的健康については比較的わかりやすいと思いますが、精神的健康(心の健康)をどうやって維持するかは、現代社会における難しい問題です。この点、ノルウェーは「児童期および青年期においては、肯定的な自己イメージと確信をもったアイデンティティの形成が特に重要です」と指摘していますが、最近の学習指導要領の改訂の議論を見るかぎり、日本ではおそらく、それらに加えて、「自分は周りの人々から受け容れられている」という安心感が、心の健康のために特に重要なのではと思います。
次回に続きます。
藤本豪


