前回に続き、一つ一つのコンピテンシーの意味内容を見ていきます。

今回は、イノベーション(Innovation)と創造性(Creativity)についてです。

イノベーションと創造性を主要コンピテンシーとして定めている国・地域・組織

このブログで取り上げた17の国、地域、組織のうち、コンピテンシーの一つとしてイノベーション(Innovation)又は創造性(Creativity)を挙げているのは、シンガポール、カナダ、ノルウェー、IB(国際バカロレア)、米国(P21 Framework)、フィンランド、エストニア、アイルランド、オーストラリア、韓国、台湾、ケニア、ブラジル、インドです。

EU、スペイン、マレーシアを除きすべてですね。世界の教育の中で、イノベーションと創造性が教育の中で特に重視されているのが分かります。EU、スペイン、マレーシアも、コンピテンシーの柱として創造性を取り上げていないというだけで、教育の中で創造性を重視しているはずです。

シンガポール

シンガポールでは、創造的思考(inventive thinking)について、次のとおり定めています。

創造的思考(inventive thinking)

創造的思考(inventive thinking)とは、課題を明確化し(frame)、調査し、探究する能力、革新的な(innovative)アイディアを生み出す能力、そしてそれらを評価し、新しく有用な解決策(novel and useful responses)をつくる(form)能力を指します。

リンク

https://sites.google.com/moe.edu.sg/inventivethinkinginaesthetics/inventive-thinking/the-what-of-inventive-thinking?utm_source=chatgpt.com

カナダ

カナダでは、イノベーションと創造性(Innovation and Creativity)について、次のとおり定めています。

このブログで以前に「アントレプレナーシップ」と併せて紹介しましたが、そこから「アントレプレナーシップ」の部分を削除して載せます。)

イノベーションと創造性(Innovation and Creativity)

「イノベーション、創造性とは、概念、アイディアまたは製品を向上させ、複雑な経済的・社会的・環境的問題に対する世界に類を見ない解決策を生み出す能力を指す。これには、独立した/型破りな(unconventional)思考、そして探究型研究(inquiry research)を通じて新たな戦略・技術・視点を試すことが含まれる。」

「イノベーション、創造性」には、以下の要素が含まれます。

  • 複雑な社会的・経済的・環境的問題への解決策を提案する
  • 創造的プロセスを通じて概念・アイディア・製品を向上させる
  • 洞察に富んだ(insightful)質問や意見を形成・表現し、新たなアイディアを生み出す
  • 新たな戦略や手法を用いて仮説を検証し実験する
  • 探究的研究(inquiry research)を通じて発見を行う
  • 様々な創造的プロセスにおいて、自主性(initiative)、想像力、創造性、自発性(spontaneity)、独創性(ingenuity)を発揮する
  • コミュニティのニーズを満たすため、新たなアイディアを追求し、リーダーシップを発揮する

ノルウェー

ノルウェーの「創造の喜び、関与、探求への熱意」(The joy of creating, engagement and the urge to explore)の定義を書いた公的文書は見つかりませんでしたが、次の内容が書かれているのが印象的でした。

「学校における最年少の児童にとって、遊び(play)はウェルビーイングと発達に不可欠ですが、教育全体において、遊びは創造的で意義ある学びの機会を提供します。」

リンク

https://www.udir.no/lk20/overordnet-del/opplaringens-verdigrunnlag/1.4-skaperglede-engasjement-og-utforskertrang?lang=eng

IB(国際バカロレア)

IB(国際バカロレア)の報告書は、創造的思考(Creative thinking)について、次のとおり述べています。

出典:

Brandt, W. C. (2023). Measuring student success skills: A review of the literature on creative thinking. Dover, NH: National Center for the Improvement of Educational Assessment.

https://www.ibo.org/globalassets/new-structure/research/pdfs/creative-thinking-full-report-en.pdf

創造的思考(Creative thinking)

「創造的思考は、反復的な(iterative)プロセスであり、その中で人はアイディアを生み出し、操作します。批判的な分析と評価を通じてそれらのアイディアを検証し、洗練させ、修正します。そして、問題を解決するため、問題解決策を改善するため、あるいは新たな方法で(in novel ways)知識を前進させるために、アイディアを伝達します。」

米国(P21 Framework)

米国(P21 Framework)では、「創造性と革新性」(CREATIVITY AND INNOVATION)について、次のとおり定めています。

創造性と革新性(CREATIVITY AND INNOVATION)

創造的に考える

  • ブレインストーミングなど、多様なアイディア創出手法を活用する
  • 新しい、価値ある(worthwhile)アイディア(漸進的(incremental)・急進的(radical)コンセプトの両方)を創出する
  • 創造に向けた努力(creative efforts)を向上・最大化するために、自身のアイディアを精緻化し(elaborate)、洗練させ(refine)、分析・評価する

他者とクリエイティブに協働する

  • 新しいアイディアを効果的に開発・実施(implementing)し、他者に伝達する(communicate)
  • 新しい多様な視点(new and diverse perspectives)に開かれた姿勢で対応し(be open and responsive)、グループの意見(input)やフィードバックを活動(work)に反映させる
  • 活動(work)において独創性(originality)と創意工夫(inventiveness)を示し、新たなアイディアを採用する際の現実的な限界(the real world limits)を理解する
  • 失敗を学びの機会と捉え、創造性とイノベーションは小さな成功と頻繁な失敗を繰り返す長期的で(long-term)循環的な(cyclical)プロセスであることを理解する

イノベーションを実行する(implement)

  • 創造的なアイディアを実行に移し(act on)、イノベーションがなされる分野に対し、具体的かつ有用な貢献(tangible and useful contribution)を行う

リンク

https://files.eric.ed.gov/fulltext/ED519462.pdf

フィンランド

フィンランドでは、「分野横断的、創造的能力」(Multidisciplinary and creative competence )について、「意味を見出し、物事を新たな方法で結びつけること」と定めています。

リンク

https://www.oph.fi/en/education-and-qualifications/transversal-competences-finnish-general-upper-secondary-education

アイルランド

アイルランドでは、「創造性を発揮する」(Being Creative)について、次のとおり定めています。

「創造性を発揮する」(Being Creative)

「創造性を発揮する」(Being Creative)は、以下の要素と関連します。

  • 想像する(imaging)
  • 選択肢や代替案を探る
  • アイディアを実行に移し(implementing)、行動を起こす(taking action)
  • 創造的に学ぶ
  • デジタル技術を用いて創造性を刺激する

リンク

https://assets.gov.ie/static/documents/framework-for-junior-cycle-2012.pdf

オーストラリア

オーストラリアでは、創造的思考(Creative Thinking)について、次のとおり定めています。

創造的思考(Creative Thinking)

創造的思考は、生徒が特定の文脈において新しいアイディアを考案し適用する、既存の状況を新しい視点で見る、代替説明を特定する、又は、ポジティブな結果を生む新しい関連性を発見するプロセスです。これには、部分を組み合わせてオリジナルなものを作成する、アイディアを精査し精緻化して可能性を発見する、理論や概念(objects)を構築する、直感に基づいて行動する(acting on intuition)などが含まれます。

リンク

https://v8.australiancurriculum.edu.au/f-10-curriculum/general-capabilities/critical-and-creative-thinking

韓国

韓国では、「創造的思考能力」について、次のとおり定めています。

創造的思考能力

創造的思考能力とは、幅広い基礎知識に基づき、多様な専門分野における知識・技能・経験を融合させることで、学生が新規のアイディアを生み出すことを可能にする能力です。

リンク

https://koreaneducentreinuk.org/wp-content/uploads/2025/04/2022%EA%B0%9C%EC%A0%95%EA%B5%90%EC%9C%A1%EA%B3%BC%EC%A0%95%EC%B4%9D%EB%A1%A0%EC%98%81%EB%AC%B8%ED%8C%90TheNationalFrameworkfortheElementaryandSecondaryCu.pdf

台湾

台湾では、計画の実行とイノベーション、変化への適応(規劃執行與創新應變)について、次のとおり定めています。

計画の実行とイノベーション、変化への適応(規劃執行與創新應變)

「計画を立案し実行する能力を備え、多様な専門知識・能力を試行錯誤しながら発展させ、生活経験を豊かにし、革新的な精神を発揮することによって、社会の変化に対応し、個人の弾力的な適応力を高めます。」

リンク

https://www.naer.edu.tw/upload/1/16/doc/288/%E5%8D%81%E4%BA%8C%E5%B9%B4%E5%9C%8B%E6%95%99%E8%AA%B2%E7%A8%8B%E7%B6%B1%E8%A6%81%E7%B8%BD%E7%B6%B1.pdf

ケニア

ケニアでは、創造性と想像力(Creativity and Imagination)について、次のとおり定めています。

創造性と想像力(Creativity and Imagination)

創造性と想像力とは、心の中に新たなイメージや感覚を形成し、それを現実のものへと変える能力を指します(ブリティッシュ・カウンシル、2016年)。それは、現実には存在しないものを想像し、見たことも経験したこともないもののイメージを心の中に形成し、それらのイメージを現実のものへと変える能力です。また、感覚に直接捉えられないもの、あるいは現実では完全には知覚されないものについて心的イメージを形成する行為や力、そしてそれらのイメージを物理的な表現として創造する行為を指します。想像力は心の中にのみ存在し、心の中に留まります。一方、創造性と想像力は、世界を新たな視点で捉え、隠れたパターンを発見し、一見無関係な現象の間に繋がりを見出し、解決策を生み出す能力によって特徴づけられます。これは、新しく価値あるものが形成される現象です。

教育の観点では、創造性と想像力とは、学習者とその教師が心の中にイメージやアイディアを形成し、それらを現実の、目に見える創造物へと変える能力を指します。想像力豊かで創造的な学習者は、自らと周囲の人々の生活を興味深いものにすることができます。学習過程で得た知識、技能、価値観を活用し、新たなアイディアを生み出し、それらが自らと周囲の人々の生活に付加価値をもたらす成果へと結びつくのです。

リンク

https://kicd.ac.ke/wp-content/uploads/2019/08/BASIC-EDUCATION-CURRICULUM-FRAMEWORK-2019.pdf

所感

創造性とイノベーションの意味については、大きく分けて、問題の解決法を生み出す力に限定するところ(シンガポール、カナダ等)と、そうでないところ(IB、米国(P21)、オーストラリア等。)があります。

内容については、米国(P21)の内容が詳しいです。「ブレインストーミングなど、多様なアイディア創出手法を活用する」、「新しい、価値あるアイディア(漸進的・急進的コンセプトの両方)を創出する」、「失敗を学びの機会と捉え、創造性とイノベーションは小さな成功と頻繁な失敗を繰り返す長期的で循環的なプロセスであることを理解する」といった、実践的な内容が含まれています。

米国(P21)の「ブレインストーミング」だけでなく、ノルウェーでは(育成の方法として)「遊び」(play)に、オーストラリアでは「直感」(intuition)に、アイルランドとケニアでは「想像」(image)に、それぞれ言及されています。

次回に続きます。

元塾 藤本豪